
『家庭重宝日記1929』(「婦女界」新年号付録、婦女界社、一九二九年一月一日、装幀=竹久夢二)。日記というだけではなく、日常生活に必要だと思われる様々な知識や情報が盛り込まれている。だから重宝なのである。巻頭から暦はもちろんのこと、今年の日食、風の種類、地震の種類、世界各国祝祭日、今年の諸注意、旧暦朔日、神仏の縁日、標準時の知識……。
そして、毎月始めの頁には「第一線に立つ女性」のデータが掲げられているのだが、生年月日から出自、経歴、住所電話番号まで記されている。今日ではまず考えられないだろう。
四月の「第一線に立つ女性/文筆による人々」はこんな人選だ。
網野菊、今井邦子、宇野千代、岡田八千代、岡本かの子、小寺菊子、太田菊子、大村加嘉代子、北川千代子、さゝきふさ、澤ゆき子、城しづか、杉浦翠子、鷹野つぎ、中条百合子、茅野雅子、中田信子、野上弥生子、長谷川かな女、林芙美子、原阿佐緒、平林たい子、深尾須磨子、松田鶴子、松村みね子、八木さわ子、柳原燁子、横山美智子、与謝野晶子、吉屋信子、米沢順子、若杉鳥子、若山喜志子
宇野千代は尾崎士郎の妻である。岡田八千代は小山内薫の妹で画家岡田三郎助の妻。小寺菊子は画家小寺健吉の妻。さゝきふさは佐佐木茂索の妻。杉浦翠子は杉浦非水の妻。茅野雅子は茅野蕭々の妻。野上弥生子は野上豊一郎の妻、長谷川時雨は三上於菟吉の妻、若山喜志子は若山牧水の未亡人。
十月の「絵筆を持つ人々」はこんな人選。
荒木月畝、有馬さとゑ、生田花朝、石川丹麗、伊藤小坡、井上よし、上野秀薫、上原桃畝、尾形奈美、甲斐仁代、柿内青葉、梶原緋佐子、上村松園、亀高文子、木内てる子、木谷千種、久世とき子、佐伯米子、島成園、長山はく子、長谷川春子、埴原久和代、平岩夏子、深澤紅[ママ]、三木初枝、山本信子、吉田ふじを、吉田雪子、和気春光
画家の女子はご主人に記載がない人が多い。亀高文子は《水先業亀高五市氏》。木内てる子は彫刻家木内克の妻。佐伯米子は言うまでもなく佐伯祐三の妻。吉田ふじをは画家吉田博の妻。
他にも「献立十二ケ月」「重宝ノート」「季節の感覚」「ナンセンス・ルーム」まど毎月の記事があり、巻末に「新女性宝典」という何でも情報ページがかなりの分量になる。とにかくこれ一冊あれば、何か知りたいことはすぐに分るという寸法。今ならネット検索になるのだろうが。

毎月の扉絵は夢二(上の図)や加藤まさを、岩田専太郎(下の図)、高畠華宵ら六人が二点ずつ担当している。

下鴨の某店の均一箱に入っていた。今「日本の古本屋」にはそれ相当な金額で二点出ている。今年の下鴨は当たりが良かった。