
田中美穂さんの新刊『亀のひみつ』(WAVE出版、二〇一二年八月二三日、ブックデザイン=松田行正+日向麻梨子)が届いた。
『苔とあるく』(WAVE出版、二〇〇七年)の姉妹編。苔本のときには紹介文に《「苔とあるく」はとりもなおさず「田中美穂と歩く」本なのである。》などと書いたけれど、この『亀のひみつ』もそれを踏んで言えば『田中美穂のひみつ』かもしれない。秘密の(というほどでもないかもしれないが)レアものプライベート(これはまちがいなく)写真が挿入されている! 蟲文庫ファンには垂涎の…(?)

例によってジャケット裏に印刷されたクサガメのサヨイチくん。迫力。
蟲文庫の猫亀ショーからはじまって亀についてのさまざまなことが分りやすく図解されており、亀入門でありながら、そこはそれ、田中美穂の本、ほっこりのなかに笑あり涙ありのスロー・リーヴル(英仏混用!)になっている。
亀知識としては「亀が鳴く」は参考になった。「亀鳴く」は藤原為家(1198ー1275)の「川越のをちの田中の夕闇に何ぞと聞けば亀のなくなり」を典拠として『俳諧歳時記』(享和三年、一八〇三年)にも収められているということだが、近代では亀が鳴くわけないだろうと誰しも思い、こんな俳句もあるくらい。
亀鳴くと嘘をつきなる俳人よ 村上鬼城 (鬼城句集)
しかし蟲さんはこう書いておられる。
《鳴き声ではなく、鼻息、といえばいちばんイメージしやすいでしょうか。擦過音(さっかおん)というのですが、伸ばしていた首を引っ込める時、肺の中の空気が一気に押し出されるために出る音です。この擦過音は、交尾の時など、何か亀自ら行動を起こそうとした時にも自然に発せられます。その場合は「ぷしゅっ」ではなく「かっかっかっ」という感じ。体の大きなゾウガメなら「ごぉーごぉー」。》
亀鳴く、というか「亀笑う」って感じ?

おなじみガケ書房の亀池や山下店長の亀親ぶりも見られるし、扉野氏が蟲さんに送ったブツも掲載されている。よくぞ、こんなものを……素敵だ。
まずは苔本同様ロングセラーになりそうな雰囲気がありあり。楽しく、うらやましい本である。