
『松竹座グラヒック』一九二八年一月号に載っている映画「メトロポリス」(フリッツ・ラング監督、一九二七年)の紹介写真より。労働者たちのアイドルであるマリアとそっくりに作られたアンドロイド・マリア(ブリギッテ・ヘルムの二役)。キャプションにいわく《おりえんたる風の仮面の美だ。独乙の審美学から割出じ[ママ]た絶対の美が是だ。優幻な的確な建築的の美》。

デザイン的には今見ても非常に斬新な感じを失わない。なかで気に入っているのは、その斬新なデザインからかけ離れた、この旧態然としたロトワング博士の書斎である。こんな革装の本を集めて人造人間が作れるというギャップが面白い。ヘアやファッションも中世風の奇抜さでマッドサイエンティストのなかでも出色の出来ではないだろうか。あるいはユダヤ教の伝承に登場する泥人形ゴーレムからの連想だろうか? アンドロイド・マリアが椅子に座っているシーンでは背後に逆さまになった五芒星が描かれている……。
ロトワング役の俳優はルドルフ・クライン=ロッゲ(Rudolf Klein=Rogge)。一八八五年ケルンに生まれた。ベルリンとボンで美術史を学んでいた学生時代に演劇に興味を抱き、デュッセルドルフなどにある劇場で演技するようになる。女優で脚本家のテア・フォン・ハルボウ(Thea von Harbou)と出会い一九一四年に結婚。一九一九年に映画の出演を始める。タイトルロールに名前の出ないチョイ役で「カリガリ博士」(ローベルト・ヴィーネ監督、一九二〇年)に出演しているそうだ。そのころテアはフリッツ・ラングと恋に落ちて、ついにはラングと結婚した(一九二〇)。

「メトロポリス」の原作・脚本はテア・フォン・ハルボウ。テアとフリッツのコンビは多くの作品を作っており、ルドルフも出演しているようだ。テアはその後ナチス支持者となり、ラング一人アメリカへ亡命(一九三四)。マリア役のブリギッテもナチスを嫌ってスイスに亡命している(一九三五)。そういったことを考え合わせると、別な意味でなかなかに深〜い映画である。