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こくいのかいじん![]() ![]() 神戸の某所でひさしぶりに漫画本を買った。『冒険まんが こくいのかいじん』(富士玩具出版社、代表者=牧野寿亀雄 名古屋市東区大曽根町1丁目、印刷者=間瀬清一 同住所、一九四八年四月一五日)。タテ126ミリと文庫本よりも小さい。おまけの赤本という雰囲気。 「まさを作画」とある。戦前のスタイルを残しながら手塚治虫らに代表される戦後派のスピーディな感じやタッチを出そうと努力しているように思える。絵はうまい。「まさを」で検索すると芳賀まさお(まさを、1905-1965)が現れた。吉本三平が『幼年倶楽部』に連載していた「コグマノコロスケ」を昭和十五年(吉本歿後)に引き継いだ作家。即断はできないにしても何となく雰囲気はある。 芳賀まさお「カバサン」 http://members.jcom.home.ne.jp/matumoto-t/senbunka6.html 芳賀まさを・川口まさし http://blogs.yahoo.co.jp/thatseurobeat/archive/2011/10/18 また富士玩具出版社では検索しても何も出て来ないのだが、富士貿易工業株式会社(発行者=間瀬清一)として一九五〇年に『ももたろう』を刊行していることだけは分かった。 ちんき堂さんに寄ってこの漫画本を見せたところ秘蔵の珍本を取り出して見せてくれた。詳しくは「まんころコラム54」(『まんだらけZENBU』連載)を参照していただきたいが、日河水洗『漫画で一ぱい』(太陽社書店、一九三三年四版)。日河水洗(むろん田河水泡のもじり)なる作家が大野きよしではないかというのが戸川さんの推測である。そして大野きよしの『魔島漂流記』(三春書房、一九四七年)も見せてもらった。田河水泡の影響(というよりも模倣、前者には宮尾しげを『団子串助漫遊記』に似た表現もあるが)は覆いがたい。その上に手塚治虫の『新宝島』を取り入れている。 《手塚治虫の『新宝島』が刊行されるや、器用な大野きよしはチャチャチャと一気に人気本の類似品を仕上げたのだった。『魔島漂流記』には『新宝島』からパロッたと思われる構図が散見する。手塚治虫は親しい先輩であるゆえ腹を立てたりせず、ニヤニヤしながらこの『魔島漂流記』を読んだのではなかろうか。》(まんころコラム) 仁義なき時代である。ニヤニヤしたかどうかは分からない。いくら親しくとも漫画家同志、しのぎを削っていたことは間違いないだろう。後年の手塚の負けん気の強さは多くの人が証言をしている。 それはともかくとしても、目の保養をさせてもらった。日河水洗はパロディ本であろうとなかろうと、大阪の赤本のレベルの高さを証明しているように思った。そして何より驚かされたのは、発行者が三島源次郎だということ。戦後、三島書房を興して三島選書などの文学書を矢継ぎ早に刊行した。『関西の出版100』にも取り上げたが、戦前は漫画を描いていたという情報などを小耳にはさんでいた。この一冊を実見して漫画の出版を行っていたことがはっきりした。戦後も文学が下火になると再び漫画本を手がけている。これは間違いないだろう。 ちんき堂さんを出てすぐ近くのギャラリー歩歩琳(ぶぶりんどう)へ。風来舎本の展示をやっていると聞いたので、立ち寄って見た。 ![]() 伊原秀夫さんと久し振りに会った。何年ぶりだろうか、忘れるくらいぶり。『林哲夫作品集』(一九九二年)を作ってもらった頃と雰囲気はほとんど変らない。最近はエレキギターに凝っているそうだ。 「不良してるわけやね」(エレキ=不良というのはわれわれの世代より少し上の感覚だろうと思うが、先日ちょうどそんな記事を見たところだったのでこの言葉が出て来た) 「不良かあ(笑)、不良といえばぼくらの仕事は……」 「一般の人から見たら不良かもしれんねえ、お互い(笑)」 風来舎本の不良どころか、きわめて善良な出版テイストをぜひ味わっていただきたい。20日まで。
by sumus_co
| 2012-07-16 21:08
| 古書日録
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