
生田誠『ロスト・モダン・トウキョウ』(集英社新書ヴィジュアル版、二〇一二年六月二〇日)。個展中に届いていたのだが、紹介する余裕がなかった。生田コレクションの質量からしてみれば、こんな本なら何十冊でも作れるだろうとは思うが、とにかく絵葉書による東京案内ベスト・セレクション第一弾という感じ。
なかでは東京タワーの夜景写真がひときわ印象に残った。エッフェル塔建設には美的観点から猛反対する人々(たとえば有名どころではモーパッサン)がいた。電波被害などの見地からスカイツリーに反対する立場はもちろんあったし京都タワーもかなりもめた。東京タワーの場合はどうだったのだろうか?

「銀座通りの市電[昭和戦前期]」と説明されている一枚に「書籍」の文字が読める。どこの本屋だろうか? 右手の茶色い大きなビルを松坂屋と見れば、
昭和六年に立て替えかれた銀座紀伊國屋書店かなあとも思うのだが、すると左手の奥の大きな建物は何かという話になってくる。右手の茶色い大きなビルはこの本の二十六頁に載っている松屋銀座似ているようだ。しかしそれなら手前に三越が建っていなければならない。どうもなんとなく場所が特定できないような画像操作がされているような気がしなくもないが、はっきりしない。

昭和戦前期の神田神保町すずらん通り。当時はすずらん通りがメインストリートだったようだ。

細部までとことん面白い絵葉書の魅力をたっぷり楽しめる一冊になっている。