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季刊本の手帖21〜30次に鴎外が最初に下宿したマリエン通りを訪ねる。森鴎外旧居である旨の碑板がはめ込まれているが、その記述が間違っていることについて(検索すると現在では森鴎外記念館がブランデンブルグ門の近くの Hermann Matern 通りにあるそうだ)。つづいてアレキサンダー広場へ。《鴎外が下宿していたはずのクロステル街九十七番地は、テレビ塔の真下、下駄ばきアパートのあたりという見当がついた。『舞姫』の太田豊太郎がエリスと出会う古寺のモデルに擬されているマリエン教会は、完全に復原されてはいるものの、まわりの近代的な建築とは、何ともちぐはぐな景観をつくりだしている。赤裸に剥がれた中世がさらしものになっているといった風情であった。》 《桑原武夫の家にも新しい書斎がある。もっとも、書斎のベッドの上まで、本が乱れ積みされているはいるが。ベッドの上の乱れ積みの方がまだしもで、わが家はもう十年もしたら、本の中に小さくなって飯を食い、眠りということになるかも知れぬという気がしているが、十年も生きてたまるかという気がしていないでもない。》 この二十二号には井上究一郎「エトナを見る」というややセンチメンタルなエッセイも収められている。 そしてサイゴンで小田君たちと別れた。 一年経って、私たちは東京へ帰るためシンガポールへ集結させられた。ジャワへ行った組、ビルマ、マレー組、ヒリピン組が一つに集められた。その中でビルマ組が一番貧弱な防暑服姿であった。私はすぐ小田君を迎えて呑んだ。小田君たちは物資が手に入らなくて困った、と語った。ジャワ組が一番立派な身なりだった。》
by sumus_co
| 2012-05-25 20:09
| 古書日録
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