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季刊本の手帖21〜30

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前田愛「東ベルリンの「舞姫」」。ジャルパックで前田が東ドイツを一週間で駆け抜けた。森鴎外『舞姫』の舞台である東ベルリンの街並みを自分の眼で確かめるというのが目的の一つだった。まずウンテル・デン・リンデンの有名な並木通りへ。《冷やかな物憂さが立ちこめている、人通りもまばらなウンテル・デン・リンデンの大通りをブランデンブルク門へと近づくにしたがって、リンデンの若芽の香りがかすかに感じられてきた。その香りだけが、何か気恥しい想いをかりたてられるほどに、なやましい精気を発散させているのだ。》……とここを読んで先頃亡くなったディートリヒ・フッシャーディスカウの「菩提樹」を思い起こした。あの名唱はやはり忘れがたい。

次に鴎外が最初に下宿したマリエン通りを訪ねる。森鴎外旧居である旨の碑板がはめ込まれているが、その記述が間違っていることについて(検索すると現在では森鴎外記念館がブランデンブルグ門の近くの Hermann Matern 通りにあるそうだ)。つづいてアレキサンダー広場へ。《鴎外が下宿していたはずのクロステル街九十七番地は、テレビ塔の真下、下駄ばきアパートのあたりという見当がついた。『舞姫』の太田豊太郎がエリスと出会う古寺のモデルに擬されているマリエン教会は、完全に復原されてはいるものの、まわりの近代的な建築とは、何ともちぐはぐな景観をつくりだしている。赤裸に剥がれた中世がさらしものになっているといった風情であった。》

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《明治二十一年の厳冬を迎えた太田豊太郎が、四階のエリスの家から見おろしていた街路は、こうした凸凹の舗道であったにちがいない。「クロステル街のあたりは凸凹坎坷[とつおうかんか]の処は見ゆめれど」とある条りである。黄昏どきの影がたれこめているこの陰うつな路地に足を踏みいれたとき、私はごく自然に『舞姫』の世界へと通ずるタイムトンネルの入り口に立っているような想いにとらえられた。エリスと太田豊太郎の暮らしは、たぶんおたがいが身をすりよせずにはいられない、侘しさをただよわせていたのだとおもう。》

季刊本の手帖21〜30_b0081843_18401233.jpg
富士正晴「書庫」。まずは司馬遼太郎が書庫を中心にして新居を建てたはずなのに書庫よりも住居の方面に力が入っていて使い勝手が悪いと不満をもらした話。そして『VIKING』の津本陽は和歌山で建て売り業をやっていたが、津本が《富士さん、土地を都合しなさい、そしたら、家はただでわたしが建てて上げますと、びっくりするような申し入れを本気でした》話。しかし富士は断る。《ぼろの家でもいいから、本の背中が読める位の広い家が買えたらその方がええんやとわたしはいったが、もし、そんな家が買えても、沢山の本を動かせて家移りすることを思うと、わたしは想像するだけでくたびれる。》、津本は空いている庭を利用すれば建たないこともないとさらに提案するのだが《うちの伸子(次女)が花を咲かしてよろこんでいるのでなあ》という理由をつけてウンと言わない。津本はあきれて帰ってしまった。

《桑原武夫の家にも新しい書斎がある。もっとも、書斎のベッドの上まで、本が乱れ積みされているはいるが。ベッドの上の乱れ積みの方がまだしもで、わが家はもう十年もしたら、本の中に小さくなって飯を食い、眠りということになるかも知れぬという気がしているが、十年も生きてたまるかという気がしていないでもない。》

この二十二号には井上究一郎「エトナを見る」というややセンチメンタルなエッセイも収められている。

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寺崎浩「小田嶽夫のこと」。《私たちは世界大戦の時、徴用されて大阪城へ集合を命じられた。私は井伏鱒二、小田君らと大阪へ行った。私は井伏、海音寺らと共にマレー派遣組であり、小田君は高見順らと一緒のビルマ派遣組であった。この二組は兵舎も同じであったし、乗せられた船も同じアフリカ丸であった。
 そしてサイゴンで小田君たちと別れた。
 一年経って、私たちは東京へ帰るためシンガポールへ集結させられた。ジャワへ行った組、ビルマ、マレー組、ヒリピン組が一つに集められた。その中でビルマ組が一番貧弱な防暑服姿であった。私はすぐ小田君を迎えて呑んだ。小田君たちは物資が手に入らなくて困った、と語った。ジャワ組が一番立派な身なりだった。》

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竹之内静雄「杜詩一句山水一幅 三好達治の死」。君山狩野直喜の揮毫した「九日藍田崔氏荘」の杜詩の解釈をめぐって三好達治の詩人的なこだわりを描く。《「一人だけ好きな詩人をあげよと、言われれば、日本では萩原朔太郎。/中国では、蘇東坡」》という言葉は竹之内に強い印象を与えた。

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by sumus_co | 2012-05-25 20:09 | 古書日録
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