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フェルメールを求めて

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プルースト『失われた時を求めて2』(高遠弘美訳、光文社古典新訳文庫、二〇一一年)を読了した。スワンの千々に乱れる恋心にはそうとう手こずらされたが「土地の名・名」へ移ると、次なる展開に期待が見えてきた、ふう、まだまだ読めるぞ。

プルーストがフェルメール好きだったことはよく知られている。高遠氏は註のなかでこう書いておられる。

《一八六六年、フランスの美術批評家トレ・ビュルガーが発表したフェルメール作品目録によって再び世に知られるようになった。現存する作品はわずか三十数点。ゴンクール兄弟などもフェルメールに触れているが、フェルメールが世界的に有名になったのは、じつはプルーストの力だという。『失われた時を求めて』のなかでフェルメールに再三触れたこと、また、書翰で、「フェルメールは二十歳のころから、私がもっとも好きな画家なのです」とか「デン・ハーグの美術館で『デルフトの眺望』を見たときから、私は、世界で一番美しい絵を見たのだということがわかりました」といったように情熱的に記していることも与って大きいというのだ。》(p37)

高遠新訳第二巻所収「スワンの恋」にフェルメールの名前は五度登場する(と思う)。例えば

《少なくとも何日かは、デン・ハーグとドレスデンとフラウンシュヴァイクに赴く必要があった。ゴールドシュミットの売り立てで、ニコラス・マースの作品としてマウリツハイス美術館が購入した『ディアナの化粧[ディアナとニンフたち]』の本当の作者はフェルメールであるとスワンは確信していた。その確信をいっそう確かなものにするために、直接作品を調べられればと思ったのだ。》

とスワンの鑑識眼が披露されているくだり。このマウリツハイス美術館には「デルフトの眺望」「真珠の首飾りの少女」「ダイアナとニンフたち」の三点が所蔵されている。プルーストは実際に一八九八年十月と一九〇二年十月にオランダを訪れ、「デルフトの眺望」などに深い感銘を覚えた。ただし「真珠の首飾りの少女」は一九〇二年にコレクターだったデス・トンブが遺贈したもの(非常に安価に入手したという)だそうで、プルーストの訪問時に「真珠の首飾りの少女」が展示されていたのか、いなかったのかは分からない。

フェルメールの小さな画集を出して見ていると、これは拙著『帰らざる風景』(みずのわ出版、二〇〇五年)にも書いてあるが、レンブラントからの構図の借用がいくつもあるのに気づく(なにしろ総点数が少ないので確率としてはかなり高い)。
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まず「兵士と笑う女」(一六五八?)の陰影を強調した構図はレンブラントの「エマオのキリスト」(一六三一)とほぼ同じ。左右逆転させただけだ。

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フェルメール「天文学者」(一六六八)はレンブラント「ホメロスの胸像の前に立つアリストテレス」(一六五三)とほぼ同じポーズ。もう一点の似たような絵「地理学者」においてもフェルメールはレンブラントの銅版画「ファウスト博士」を手本にしたようだ。

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そしてウィーンにある大作「絵画芸術」(一六七三?)のモデルの女性はレンブラント「フローラに扮するサスキア」(一六三四)とほぼ同じ立ち姿。イーゼルに向かう画家の方もたしかレンブラントに同じような若書きの自画像があったように思う(今すぐ図版が出て来ないので省略)。

もちろんレンブラント以外にもテル・ボルフ、ヘラルド・ダウ、ピーテル・デ・ホーホら同時代の画家たちの構図やポーズを参考にしているわけだが(だからこそ無名時代にはそれらの画家の作品と間違われたりしてきたのだが)、画の品格というものは図抜けていて、レンブラントと比較してもまったく遜色はない。プルーストが世界一好きだという理由がよく分かる。それなのに長らく忘れ去れていたとは、世間の評価などまったく当てにならないということの証拠以外の何ものでもない。

もうひとつ画集を眺めていて思い出した。「牛乳を注ぐ女」(一六五八〜九)のテーブルの形が変だなどという指摘があって、わざわざCGでテーブルを真っすぐに直した図像を作って美術雑誌に載せたりしているのを見たことがある。しかし、それは大きな誤解であろう。このテーブルの天板はもともと長方形ではないのだ。フェルメールのデッサンがおかしいのではない。
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「眠る女」(一六五六〜七)に描かれた奥の部屋にテーブルが置かれている。台形なのである。おそらく(断言はしないが)これと同じテーブルにパンなどが載っている。そう思って見れば「牛乳を注ぐ女」には何もおかしいところはないだろう。

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昔、いろいろと検討を重ねたときのメモがその小さな画集(『新潮美術文庫13フェルメール』、一九七五年)に挟んであった。タイルのパターンを数えたり、タイルの配置から部屋の構造を推測したりしている。今ではそれこそCGで研究され尽くしているようなことであろう。それにしても、このタイルの模様だけを考えても、フェルメールという画家、一筋縄ではいかないヤツである。
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by sumus_co | 2012-05-15 21:33 | 雲遅空想美術館
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