

「善行堂にトポールがありましたよ」と扉野氏が教えてくれたので、みやこめっせの後、久し振りに足を伸ばしてみた。階段付近に積み上げられた洋書のなかからまずはトポールのペーパーバック二冊を確保。聞く所によれば、それら一山のフランス書は仏文学者で小説家の某氏が最近処分されたものだという。なるほどいくつかの書物には書き込みが散見される。
例えばアスタルテ書房には生田耕作の書き込み(書き入れというべきか)本が何冊かあるが、それなりの評価がされていて手が出ない。善行堂もそれなりの評価はしているのだろうが、サッと手が出る。とはいえ、全部買い占めるわけにもいかないため、数冊にとどめておいた。
上はトポール『リュシエンヌに薔薇を Four roses for Lucienne』(UNION GÉNÉRALE D'ÉDITIONS,1986, 元版は Christian Bourgois éditeur, 1967)。短編小説(奇妙な話ばかり)四十三篇が収められている。巻末の目次には旧蔵者によってV印(三篇)と0印(一篇)が付けられている。印はないが表題作の「リュシエンヌに薔薇を」には半ばまで訳語が書き込まれ、詳しく読んだ様子がうかがえる。
もう一冊の『La cuisine Cannibale』(Balland, 1986 新版、元版は 1970)、こちらには書き込みはない。挿絵入りでトポール好きにはうれしい一冊。カニバリスムはトポールの偏愛した主題である。

トポールについて以前『coto』に書いた文章をアップしておいた。お閑な方はお読みください。
ローラン・トポールのパリ(『coto』20)
http://sumus.exblog.jp/14536900/
それから一番書き込みが多かったのがこちら、マルセル・エイメ『マルタンの虚実の人生』(朝日出版、一九八二年三刷)のフランス語読本。おそらく教科書として用いたものか。トポールが挿絵を描いたエイメの著作集もあるように、当然ながらこれらの書物には某氏の好みが反映されていると推察された。