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竹久夢二「寂しき食卓」

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昨日の嬉しい収穫はこの一枚のボロボロな絵葉書。絵は《竹久夢二氏筆 寂しき食卓》、切手面には《郵便ハガキ 東京九段つるや画房 POST CARD》と印刷されており《日本橋 8.6.21 后9-10》の消印がある。つるや画房は「月刊夢二絵はがき」の版元で九段の他に東京牛込早稲田鶴巻町四三にもあったようだ(詳しくはコメント欄をご覧下さい)。

竹久夢二と静岡ゆかりの美術』展図録(静岡市美術館、二〇一二年一月七日)にはつるや画房製の絵葉書が三十枚ほど収録されていて参考になる。ただしこの絵葉書は含まれていない。「寂しき食卓」で検索してみると下記の論文がヒットした。

Kwansei Gakuin University Repository
夢二とキリスト教 : 「竹久夢二抒情画展覧会」(1918年) をめぐって
小嶋洋子


大正七年四月十一日から二十一日まで京都の府立図書館で「竹久夢二抒情画展覧会」が開かれた(五月には神戸のキリスト教青年会館へ巡回している)。京都での展覧会は大正元年についで二度目であった。その目録が存在しているようで(金沢湯湧夢二館蔵)、出品目録から《会場が第一室,第二室,第三室という三つの部屋から構成されていたこと,そして各部屋の展示作品数が,第一室には 29 作品, 第二室には 41 作品,第三室には 12 作品であったことがわかる》そうだ。小嶋女史によれば「寂しき食卓」は

《第二室の作品は,《椅子によれる女》,《舞姫》など,なかには一連の「抒情画展覧会ハガキ」(2)で作品を確認できるものもあるが,どのような作品であったのか不明なものが多い。
 そんななかで,目録に図版が掲載されている作品《寂しき食卓》(図 1)では,テーブルでパンを切ろうとする女性の奥の壁に聖女の絵がかけられている。キリスト教を想起させる画面ではあるが,第一室のような南蛮趣味といったような特徴は見られない。》

そしてここで図1として紹介されている「寂しき食卓」のモノクロ図版はこの絵葉書とほぼ同一作品だと考えていいようだ。ほぼ、というのは、図録では右が少し切れていて、絵葉書にはっきり見える夢二マークと年号が消えているからである。ただし、あるいはマークも年号も図録の時点では書き込まれていなかったのかもしれない(図録の写真を撮影するときに、よくあることだが、絵が完成していなかったか)。

その可能性は「APL 1918」という記入それ自体が物語っている。展覧会が四月十一日からなのに四月のサインというのは、ギリギリに仕上がった(サインを入れた)証拠であろう。図録には間に合わないはずである。

切手面の文字を読んでおく。まず宛名と発信(一文字不明)。

  新潟県
  刈羽郡正明寺
  巻口泰蔵様

  東京にて
    □三

通信の全文。

  泰蔵様此の間御手紙どうも
  有難ふ、その後は御変り
  もございませんか、ずつと前に
  無量寺へ行つたら泰蔵様
  は学校で手をケガしたそう
  ですがどんなになつたのですか、
  泰蔵様があんまり元気な
  手紙を下さるのですから私は
  そんな事忘れて居ました、
  何が何でも体が一番大切
  ですから体を大切にして
  御勉強なさい、
       さよなら、

新潟県刈羽郡刈羽村正明寺は越後線荒浜駅近くの地名。柏崎刈羽原子力発電所から数キロ南方である。無量寺は新潟市北区にある寺だろうか? 

  *

夢二の研究者である石川桂子さんにこのコピーをお送りしたところ、二〇〇七年に千葉市美術館他で開催された「竹久夢二展 描くこと生きること」の図録につるや画房発行の「夢二傑作集その五 女と子供によするエハガキ」(四枚組)が掲載されていることをご教示いただいた。その中にこの「寂しき食卓」が含まれている。というわけで新発見ではなかったのが少々残念…。
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by sumus_co | 2012-04-29 17:31 | 雲遅空想美術館
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