「愛を読むひと」(The Reader、スティーブン・ダルドリー監督、2008、アメリカ・ドイツ合作映画、英語作品)を見た。ベルンハルト・シュリンクの小説『朗読者 Der Vorleser』を映画化したもの。よく売れた小説で一時期ブックオフの百円棚にいつも出ていた。立ち読みして面白そうだと思って買って帰った。それから何年経っただろうか、初め、この映画を見ていても原作が『朗読者』だとは思いもしなかったが、ナチ協力者の裁判のシーンになってやっと思い出した。そう言えばそういう話だった。
中年女性と十五歳の青年が出会って愛し合う。女は文字が読めない(が、そのことを恥じて隠している)、少年に朗読をしてくれるよう求める。少年は教科書の読本からはじめて次々といろいろな本を読んで聞かせる。蜜のような日々が続くが、女は突然姿を消す。
女は収容所の看守だった。爆撃による火災によって護送中の囚人三百人を見殺しにしたということで終身刑を言い渡される。少年は大人になり、結婚し、離婚し、親元へ戻る。そこに青年時代に女に読んで聞かせた本が残っていた。二十年近い時が流れていた。
男は刑務所の女に自分で改めて朗読したテープとテープレコーダーを送る。女はその朗読を頼りに刑務所内の図書室から同じ本を借り出し独力で文字を覚える。上はその小さな図書室と貸し出し係。
法律家になった男の書斎。女の仮出所の電話を受けている。身寄りが誰もいないので何とかしてほしいと刑務所の担当者から求められるのだが…。
ケイト・ウィンスレットの体当たり(文字通り)演技が見所。だが、画面に写った朗読している本『オデュッセイア』や『犬を連れた奥さん』が全部英語版なのだ。これは味消しだろう。せめてテクストはドイツ語にしておいてもよかったのではないか。警察の車にポリッツァイ(ドイツ語でポリス)と書いてあるのと矛盾するだろう。