石川桂子『竹久夢二《デザイン》モダンガールの宝箱』(講談社、二〇一二年四月五日、デザイン=中川あゆみ)を頂戴した。
『大正ロマン手帖 ノスタルジック&モダンの世界』と同じように図版でたたみかけてくる、まさに宝箱。夢二好きの泣き所をしっかりと押さえている。デザイナーとしての夢二をクローズアップした編集がいい。雑誌の仕事(知らない雑誌がいっぱい)、書籍装幀(知らない夢二装幀本が何冊も!)、カット・イラスト(丁寧に拾い集められている)、絵葉書(もちろん生田誠さんの助力あり)、楽譜から商業デザインの数々。期待に応えながら期待を裏切る、新しい夢二の側面を見つけられるだろう。好著。
やはり個人的に注目したのは喫茶店資料。千疋屋の機関紙『fruits』のためのデザイン。上は一九二九年一一月号。本書の表紙になっているのは『三越』の表紙画(大正十四年)だが、これもフルーツパーラーのようだ。アール・デコの様式をさりげなく取り入れているところが夢二アンテナ。常に夢二は世界の美術やデザインの動向に注意を払っていた。それを夢二風にきちんと消化しているところが才能の質というものだろうか。