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香川不抱

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ようやく桂孝二『彩翅・琴山・不抱 香川県近代短歌の出発』(讃文社、一九七二年)を入手できた。じつは、昨年、以下のようなメールを読者の方より頂戴していたのだ。

《今正月、香川帰省時に高松寿町の古書店「リバー書房」を訪ねました。勿論、讃州堂にも寄りました。リバーで買った一冊(桂 孝二著、「彩翅・琴山・不抱 香川県近代短歌の出発」、讃文社昭和47年発行)に不抱の紹介があり、生家も近く、学窓(現丸亀高校)の大先輩であることを知り、親しく感じた次第です。》

この方は関東方面にお住まいで、東京美術倶楽部での個展の折にご足労くださって、お会いすることができた。それ以来、讃岐の歌人たち、とくに香川不抱については非常に興味をかき立てられてきたが、いかんせん、すぐには本が見つからなかった(今、思えば、もっと丁寧に検索すれば、この本はもとより、ある程度の資料は集められたはず)。ただ、この一冊はネットなどではなく讃州堂の棚から求めたもので、それがみょうに嬉しい。本書によれば不抱の略歴は以下のようなものである。

《香川不抱(本名栄)明治二十一年香川県綾歌郡川西村に生る。丸亀中学校時代より新詩社に加はり、「明星」「スバル」に短歌を発表。自家の窮境を歌ひてユーモラスなる新体を開くことは石川啄木に先行せり。大正八年頃大阪に在りて歿す。》(『現代日本文学全集第三十八巻 現代短歌集 現代俳句集』改造社、一九二九年、より)

またもう少し詳しい補足もある。

《鎌田共済会発行の『香川不抱歌集』附載の「年譜」によれば、「明治二十二年二月十日、もと香川県綾歌郡川西村大字西二字鍛冶屋(現丸亀市川西町北)に生れ、本名香川栄、父政次、母ワキの長男とあり、「大正六年十月五日高松市西浜新町に於て病歿、享年二十九、遺稿、遺品は悉く母堂の手によって焼却せられ身辺一切のものが失われた。」とある。この改造社版文学全集の年譜の生歿年は誤っていることとなる。》

明治二十八年四月 川西尋常小学校入学
明治三十二年四月 飯山高等小学校入学
明治三十五年四月 私立尽誠舎入学、翌年退学
明治三十六年四月 香川県立丸亀中学校入学、三年時代より長詩、短歌を創作、投稿
明治四十年春、一家は高松市西通町王子権現東辺に転居。新詩社に入る。
明治四十一年三月 丸亀中学校卒業、四月上京、与謝野夫妻の指導を受ける。新詩社同人となる。
明治四十二年の終わり頃、家運の激変と健康を害したため高松に帰り香川新報社に入る。
明治四十五年頃 大阪に出て米相場などに一、二年を費やす。病を得て高松へ戻り療養生活に入る。
大正四、五年頃 病勢悪化するも終日作歌に専念したという。

で、肝心の啄木に先行する(本書の著者・桂氏はこの点には否定的)という不抱の短歌とはいかなるものか。まずは初期の『明星』初入選の一首(明治四十年五月)。

 わがこころたひらかなるを乱すもの少女といひぬいかが追はまし

翌年八月二十三首が取り上げられた。セカチューな一首(丸亀高等学校にこの歌碑があるそうだ)。

 吾ここにありと叫びぬ千萬(ちよろづ)の中の一つの星と知りつつ

同じく犬の歌があったので拾っておこう。

 くれなゐの焔の舌を犬は吐く汝もかわくか我もかわけり

同じくやや啄木調。

 わが足の遅きにあらず列を出づ駈けて行くものあまりに多きに

 より強きものの来るをおそれつつ弱きにまじり我をほこりぬ

『明星』時代は要するに不抱の青春そのものだった。実生活にさらされて作風も「私的」な、しかもきわめて軟弱な心情を歌うように変って行く。『スバル』明治四十二〜四年に発表したものより。

 歌へるはかの乞食(こつじき)のふちかけし茶碗をもちてあるにひとしき
 
 我もまた暗きところは手をふりて男らしくもあるき得るかな

 泣顔の若き不抱(ふはう)が口笛を吹く時ばかり悲しきは無し

 美しき男にのみ風吹かず吾の肩にも花散りかかる

 あはれなる吾の涙は暗き室(ま)の隅にて流れ手をもてぬぐはる

 泣かしめしことと使に行かしめし事あるのみ死にし妹

 ぽけっとに巻煙草なき銭のなきいんばねす着て寒かりしかな

 わが口の少しゆがみてあることは親も気附かず我のみぞ知る

 天地をくつがへすほど轟きて針のさきほど光るいなづま


桂氏は不抱の短歌についてこう書いている。

《啄木の場合、覇気のある歌にまじっているので、そいう凡人の歌が引き立ったのであるが、不抱は、凡人に徹しているようである。そこに物足りぬ点があると考えられる。しかし、また、そこに不抱の素朴純真な人柄が浮かんでくるようで、こういう生活詠は当時としては例を見ないのではなるかいかとも考えられるのである。》

香川不抱は自然主義的というかわたくし的短歌の先行者であった。
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by sumus_co | 2012-03-18 21:21 | うどん県あれこれ
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