サミュエル・ベケット『waiting for godot a tragicomedy in two acts』(Grove Press, EVERGREEN BOOK,1954, fourth printing)。このゴドーはベケット自身がフランス語から英語に翻訳してイギリスに先駆けてニューヨークで出版した書物。初版は一九五四年刊のハードカバーで、これは相当な古書価(数十万円)。そのダストジャケットと同じデザインのソフトカバー版がこれ。こちらも初刷なら数万円はしているようだ。本書は四刷なのでぐっと下がるのだろうが、まあそれはそれなりに珍しい本だと言える。大学堂書店の表の均一台に入っていた。
ゴドー(Godot)というのはどういう意味なのか。安直だがウィキで調べると、英語版では
フランス語の「godillot 昔の兵隊がはいたブーツ」「godasse 靴」からとったとベケットが述べた説(Roger Blin)
もともとフランス語で書いたので God ではないが無意識にゴッドが頭にあったのかもしれないと認めた説(Peter Woodthorpe)
ベテランの競輪選手の名前 Roger Godeau からで、ベケットがゴドー選手を競輪場の前で待っていた説(Hugh Kenner)
などが挙っている。フランス語ウィキには rue Godot(ゴドー通)説や競輪選手(ただしGodot となっているが)説の他にバルザックの小説『策師 le faiseur』に Monsieur Godeau を待ち続けるという前例があることを指摘している(ただしベケットはこの作品は読んだことがないと否定)。
まあ、とにかくゴッドではないにしても、誰もがゴッドを連想することは間違いない。ベケットによれば、北米ではドを強く言うが、ゴを強く発音するのが本当だそうだ。t は発音しない。とすると、よけいにゴッドに近くなる。
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