
トリュフォーのDVD「柔らかい肌 LA PEAU DOUCE」(1964, LE FILM DU CARROSSE)を見た。ストリーは有名な文芸評論家ラシュネーがスチュワーデスのニコラと浮気をして妻にばれて……というまったくありふれたもの。映画全体よりも細部がとても面白い。六〇年代の映像資料としても貴重だ。ガソリンスタンドの給油メーターとか、ジュトンでかける電話室だとか。
ニコラはフランソワーズ・ドルレアック(Françoise Dorléac)。カトリーヌ・ドヌーヴに似ているなと思ったら実の姉であった。二十五歳で交通事故死している。文芸評論家はジャン・ドサイ(Jean Desailly)、神経質そうな感じがフランスのインテリにぴったり。
上の場面はムッシュー・ラシュネーがランス(REIMS)でジイドの映画ために講演をすることになり、ニコラと一夜を過ごしたいばかりに連れて行っている。その車中で、どこのホテルに泊まろうかとミシュラン・ガイドを見て探しているところ。車に積んでおいて、こうやって使うものだというのが分かる。一番いいホテルは知人が多そうだ、二番目もだめだ、三番目はどうだい、レストランがないわ、でもそこにしよう、外で食べればいいし、などという会話が交わされる。
架蔵の一九八六年版の赤ミシュラン。ホテルとレストラン・ガイド。

ランスは四ページ半にわたって詳しく紹介されている。映画の字幕にある「グランドホテル」というホテルは見当たらないようだ。ボワイエ(Boyer Les Crayères)が三ツ星でトップ。

ラシュネー氏がマダム・ラシュネー(Nelly Benedetti)と別居することになって荷物を取りに戻ったシーンから。夫の書棚(他に事務所を構えていて、そこにも本棚がある)。

フジタを持っていきなさい、いや、君にプレゼントしたものだから置いて行く…。

これは藤田嗣治の「くちづけ」(一九一四年)。画家がパリに着いた次の年、第一次世界大戦が始まったにもかかわらずパリに留まって、どん底の生活をしていた頃のようだ。モディリアーニあるいはブランクーシとの類似が見られる。この時代のフジタがいちばん好きだ。