
帰省中に少しだけ時間があったので
香川県立図書館の「郷土コーナー」で調べもの、というか調べる前の下調べ、をしてみた。開架の棚を見ていると貴重書も差してあって喜ぶ。中河与一『恐ろしき私』(改造社、一九二七年六月二〇日)。この装幀が佐伯祐三なのだ。図版写真では知っていたものの手に取ったのは初めて。元は函付きのようだが、図書館の通例として函は捨てられている(著者寄贈本)。中河与一は明治三十年坂出町(現坂出市)生まれ。

他に目にとまったのは黒島伝治。新鋭文学叢書『浮動する地価』(一九三〇年)と日本プロレタリア傑作選集『氷河』(一九三〇年)。黒島は明治三十一年香川県小豆郡苗羽村(現小豆島町)生まれ。壷井栄は隣の坂手村(現小豆島町)の出身。ざっと見たところ近代作家では菊池寛と壷井栄の本が多かった。菊池寛は別の階に記念室が設けられている。
同じ建物の四階に高松市歴史資料館があり「馬場景泉展 現代花鳥画の精華」が開かれていた。

馬場は明治二十七年山田郡西植田村(現高松市西植田町)生まれ。本名石原藤三郎。十三歳で京都へ出て今尾景年の門に入る。昭和六年に高松へ戻り、花鳥画に専心するとともに県美術界の発展に貢献した。昭和二十九年歿。
とりたてて卓越した作家とは思えないものの、景年から「景」の字を許されただけはあって、それなりに見応えのある描写。兄弟子で三重出身の今井景樹と親しくしていたのだそうで、景樹の作品も並んでいた。
図録には猪熊信男(一八八二〜一九六三、東かがわ市松原の猪熊家の養嗣子、広島大学教授、宮内庁図書寮御用掛などを務め、古文書・古典籍の収集は恩頼堂文庫として知られる、猪熊家は白鳥神社の神職)や阿野赤鳥(一八九七〜一九七二、山田郡庵治村出身、香川近代詩の草分け的存在)らとも親交があったようなことが書かれていた。郷里についても知らないことばかりである。