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ぼくの古本探検記

ぼくの古本探検記_b0081843_1513243.jpg

高橋輝次『ぼくの古本探検記』(大散歩通信社、二〇一一年一一月一日、装幀=朝日久美子、装画=林哲夫)がようやく出来上がった。高橋さんから「まだできないんですよお、どうしたんでしょうね」というファックスが何度も届いていたので、きっと喜んでおられることだろう。内容は『古書往来』(みずのわ出版、二〇〇九年)の続編というか、テルツグ節とでも呼ぶべき円熟の古本エッセイが堪能できる好著になっているように思う。

テルツグ節の特徴。まずは古本との遭遇・邂逅を叙述するところからはじまり、書物の内容をわりあいに詳しく引用紹介し、いもづる式に追記を重ねるというスタイル。ひとりボケ・ツッコミも適度に挟まれ微苦笑を誘う。テーマは古書、出版、埋もれた作家、詩人、画家などに言及したエッセイや雑誌、追悼集などの資料の発掘・探求である。とにかくウルトラ・マイナー・ポエットが好きなんだ、高橋さん。

それぞれの文章に必ずつけられる枕ともいうべき発見譚の一例を。

《秋は大規模な古本展が目白押しである。だが、私は遅れをとってばかりで、どうも近頃、初日の朝から行って競って掘出し本を探そうという意欲に欠けているようだ。十月下旬に開かれた四天王寺古本祭りの際も、初日の午後おそく、ようやく出陣した。
 どの店だったか覚えていないが、黒っぽい本がぎっしり並んでいる間に背のごく薄い本が挟まれていたので、どんな本かと抜き出して見ると、それはあっさりしたブルーの枠の中にタイトル文字だけが書かれた表紙の、小寺正三句集『月の村』(まるめろ叢書1、大阪、星雲社、昭和二十三年)であった。私はとっさに思い出した。この著者は大分以前、梅田、萬字屋書店の均一本コーナーで入手した『へそまがりの弁』(全線社、昭和六十一年)というエッセイ集を出した人だと。》

《さて、この句集をひらくと、見返しに「かがまりて人をながむる秋祭 正三」と自句が直筆で書かれている。さらに日野草城が「著者へ」を寄せ、伊丹三樹彦が序を書いている。これはいいぞ、と思ったが、値段の表示がない。恐る恐るレジに持っていって尋ねると、三〇〇円也。私はしめしめと思い、急いで買い求めた。》

は、は、まるでおのれの姿を見ているようだ(苦笑)。この一篇(「大阪の俳人、小寺正三の人と仕事」)の「追記」は一つだけ(二つ三つは当り前なのに)。

《神戸、三宮での所用から帰る途中、久々に春日道[ママ、春日野道]で下車し、商店街の中にある勉強堂さんをのぞいた。街の古本屋さんだが、時々面白い本もまじっているので、寄るのが楽しみだ。そこで、うれしいことに、『続・紙魚放光ーー尾上蒐文洞追悼集』(尾上静男発行、湯川成一装幀、限定一五〇部、平成八年)を安い値段で見つけることができた。こんな貴重な本が売れずに残っていたのは不思議な気がする。》

ほんと、勉強堂さんはいい店だ。そこで見つけた『続・紙魚放光』に小寺正三も寄稿していた。小寺が同人雑誌(『大阪作家』?)の赤字を埋めるために蔵書を処分して尾上蒐文洞と親しくなり、蒐文洞が堀辰雄の色紙を高く買い取ってくれたという思い出。

他には「十三の詩人、清水正一の生涯と仕事を追って」がいかにも高橋さんらしい追求で、がぜん『清水正一詩集』(編集工房ノア、正・一九七九年、続・一九八五年)が読みたくなる一篇。以前ここでも少し触れた『犬は詩人を裏切らない』(手毬文庫、一九八二年)はほんとにいいエッセイ集。

ところで今検索していると『君に会いたい』(ザ・ジャガーズ、一九六七年)の作詞者が清水正一だとあった。若さゆえ苦しみ 若さゆえ悩み……。十三の詩人と同一人物だろうか? 雑誌『Po』の清水正一特集を元にした高橋さんの記述はこの件に触れていない。

ぼくの古本探検記_b0081843_15125334.jpg

造本などもこれまでの高橋さんの著書とはひと味ちがう。さすが大散歩通信社。本文のインキがアズキ色なのには意表をつかれた。けれど、馴れるとけっこう読みやすい。

表紙画は街の草さんの店頭に立つ高橋さん。バラしてしまうと、背景と人物は別々に描いてイラストレーター(描画ソフト)で合成してある(アニメの手法ですね)。高橋さんの立ち位置をどこにするかでちょっとデザイナーさんは悩んだ(?)ようだが、通りの奥の建物が見える方がいいでしょうというコンセプトでこの形になった。高橋さんご本人はどう思っておられるか、この似顔絵はそれそうとうに苦心した。自慢じゃないが、似ています。

クリケット日和(大散歩通信社の日常)
http://d.hatena.ne.jp/cricket007/
by sumus_co | 2011-10-31 16:32 | 装幀=林哲夫
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