
百万遍での一冊。この表紙にハートを掴まれてしまった。少々高かったし、ビニール袋でぴったり封じられていた。中を見れば気持ちも違ったかもしれないが、破ってまで見るほどでもないし、かえって見ない方がスリルがあるか……などと、その函の前にしゃがみこんでウンウン呻吟していると、季村敏夫さんが通りがかったので、これ幸いと教えを乞うたが、季村さんでも知らないとおっしゃる。ゴタ派、どこかで……。これを置いて帰っては後でぜったいに悔やむだろうと思い、購入することにした。わざわざ領収書をもらった(というほどの額でもなかったが、百円単位でもなかったので)。
ゴタ派のタイトルについては中を見るとすぐに疑問氷解。
《「ゴタ派」の題名が示すとほりに、同人もいろいろまちまちで、従つて主義も主張もゴタ派である。
因にこの名は、東京の小山清氏の許可を得て、同氏の短篇「ゴタ派」から戴いた。発刊に際し、「我儘、活発な作品を期待」するといふ激励のお便りに接した。また表紙はゴタ派の溜場クールの末吉春南氏の御好意を患はした。》
《註(小山清氏によると、古本屋仲間では、棚に並べてまともに商品として扱へない代物のことをゴタといふさうである)》
奥付は次の通り。
ゴタ派
第一号
(定価 五十円)
大阪市福島区吉野町一丁目一三五
編集兼/発行人 盛川宏
印刷所 サイガ孔版
発行所 ゴタ派発行所
昭和三十三年四月一日印刷
昭和三十三年四月十日発行
目次は以下のようになっている。執筆している四名に加えて四反田誠己が同人に名前を連ねている。といっても、ネット検索ではほとんど情報が得られない。ただ「盛川宏」という名前では数々の釣りの本を出している著者がいる。その盛川氏は一九三二年生れ。もしこの盛川氏と同一人物ならば二十六歳のときの同人雑誌ということになる。「逃げたい風景」は小説家志望の青年の奇妙な女性との関係をテーマとした一種のアプレ小説。織田作というか椿實をちょっと連想させるもの、悪くない。
頓狂なる足 朝名荒一
逃げたい風景 盛川宏
打込まれた楔 新井弘実
詩
ニーワラの人間達 林 久仁
(他一篇)
ゴタ派後記
表 紙 末吉春南
カツト 林 邦男

後記にも出ている末吉春南が主人だったという「茶房クール」が気になる。住所は市電野田阪神電停前西側。ゴタ派の例会通知の会場となっている他に囲み広告も載せている。
COFFEE
TEA ROOM KOOL
[46]1727
NODAHANSHIN, DENTEIMAE
たとえば
「野田阪神の踏切」という詩を書いた桑島玄二は昭和三十年前後、尼崎あたりに住んでいた(詳しくは調べていませんが)。クールにも出入りしただろうか? などと想像をたくましくしたくなる。