
上野憲男さん宅で拝見した『カイエ ドオル』第一号(カイエ ドオル社、一九五七年、表紙画=パウル・クレー)。貴重なものだが、拝借して複写させていただいた。編集人は島田しず子(
嶋田しず、画家)。題字、挿絵、広告の文字を佐野繁次郎が描いている。
巻頭は林芙美子『放浪記』よりの抜粋。編集後記にこうある。
《えを佐野先生にお願いしたのも、林先生が生前、お約束のあった事、両先生から承っておりましたので、両先生に厚く御礼申し上げます。》
佐野は林芙美子の単行本の装幀を戦前から戦後にわたって何冊も手がけているが、「お約束」とはどういう意味だろう。『放浪記』再刊の際には挿絵(装幀?)を引受けるということだろうか。初版は改造社の
新鋭文学叢書(一九三〇年)として刊行されており、デザインはいかにも構成主義ふうのもの。

次の石原慎太郎の挿絵は島田しず子。この時期には佐野とほとんど同じような絵を描いていたことが分かる。装幀本にもそっくりなものがある。島田はこの後、婦人画報へ移り、パリへ派遣されて、そのまま住み着いてしまうのだが、島田がパピリオを出た後、上野さんが採用されたという流れになるようだ。