
勝見洋一『餞』(幻戯書房、二〇一一年八月一四日、装幀=間村俊一)。上京中の一夜、間村さんと一献傾けた。そのとき見せられた渾身の近作装幀がこの一冊。なんと本文も活版で刷っている。
間村さんの言葉によれば『文學界』に発表された中篇小説「餞」に魅了された幻戯書房の女性編集者が著者と交渉の末にこの一作だけで本にするならということで単行本化されたものだという。一見、束はかなりあるのだが、本文がゆったりと組まれており、さらにやや厚手の本文紙が用いられているためにそう思えるだけで、あんがい短く、読み始めてみるとすらすらと調子良く読了できた。
間村さんが活版で刷ることを提案。最近では紙型(しけい)を取らないため増刷はできないのを承知のうえで著者と書房主の決断によって活版が採用された。増刷の際にはオフセットでやり直すということだそうだ。ある意味画期的な出版物である。印刷もきわめて明瞭で活版にありがちな刷りむらをほとんど感じさせない。印刷は内外文字印刷。
カバーのざらついた用紙(ハーフエアー|コットン)に巨大な「餞」の文字を透明な箔(?)で押し出したのがいかにも間村好み。背と背側の上隅に配した金箔押しの「餞」字も効いている。綾織りつむぎクロスの表紙も平が空押し、背が銀箔押し。押しまくっている!

「どうや」と自信たっぷりの扉のレイアウト。作品の内容まで連想させる艶やかさだ。

本文の組はイワタ明朝10ポで三十四字十二行(一八〇頁)。

内容については帯文がうますぎるくらいうまくまとめている。過去と現在、エロスとグルマンが入れ子になった凝りに凝った小説である。
《中国共産党によって破壊される前の北京天橋ーー
酒楼妓楼ひしめく街で鼓姫(うたひめ)を愛した欣哉。
半世紀後、その街で出会ったのは、亡き息子の許嫁だった。
衝撃の処女作
究極の幽明綺譚
お義父さまの子を宿しました。》
幻戯書房NEWS
http://genkishobo.exblog.jp/
創作の現場 勝見洋一
http://www.honyaclub.com/shop/contents2/tenbo1_sousaku.aspx