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考える人/日本古書通信

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今月になってから本ブログの「検索ワード」のトップに「山中独膳」が躍り出ている(daily-sumus、林、などは除外して)。理由が分からないので当方も検索し返して(?)みると、それは日経新聞に小林勇の『山中独膳』が取り上げられたためらしい。急に特定の単語が増えるときは、テレビか新聞に出たとき。あるいはときにツイッターではないかと思えるものもある。

そして数字的には少し離れた第二位が「佐野繁次郎(および佐野繁治郎)」だった。その理由もよく分からなかったのだが、どうやらこの『考える人』(新潮社)に連載中の津野海太郎「花森安治伝」だったようだ。最新号(二〇一一年秋号、二〇一一年九月一日)で佐野繁次郎と花森の出会いについてかなり詳しく考察されている。

考える人/日本古書通信_b0081843_1943164.jpg

ブログ読者の方から小生の名前が出ているとお教えいただいたので、近所の書店へ走って立ち読みしようと思った。ところがざっと読んでみると、なかなかよく調べられており、花森伝とともに佐野伝にも役立つ内容だったので購入することにした(佐野伝を書いているわけではありません)。津野氏は文中で『佐野繁次郎装幀集成』(みずのわ出版、二〇〇八年)の年譜を何度も引用し、林哲夫編年譜と書いてくださっているのだが、実際はちゃんと付記してあるようにその内容の九割以上は橋秀文(神奈川県立近代美術館)さんの作ったもので、記述もかなり簡略化している(その分読みやすくはなっているが)。汗顔のいたりなり。

  *

もうひとつ佐野関連で『日本古書通信』985号に曾根博義「犬も歩けば近代文学資料探索」連載(20)に改造社から昭和八年に出た『横光利一集第一巻』について書かれていた。これはなかなか興味深い内容だった。
考える人/日本古書通信_b0081843_19425228.jpg

《『横光利一集 第一巻』は、昭和八年十二月十六日、改造社発行。装幀・佐野繁次郎。四六判函入本文三六字×一二行、全五三八頁、定価一円八〇銭。巻頭に見開き二頁の目次があるほかは、各篇の扉と本文、奥付のみ。単行本の小説集とまったく同じ体裁である。ただ一か所、奥付中に記された書名は「横光利一集 第一巻」/「思ひ出」」。》

奇妙というか、少し風変わりなのは、第一巻ながら収録作品が昭和七〜八年に発表した最新作十篇だということである。

《ところがこの『横光利一集 第一巻』は『横光利一全集 第一巻』ではない。ないからといって「第一巻」とあるのだから、個人の全集あるいは著作集と思うのがふつうだろう。しかしこの本には第一巻だけがあって、第二卷以下はないようなのだ。
 一般に物が存在することを証明するより、存在しないことを証明することの方がはるかに難しい。》

曾根氏が八方手を尽くして探索されても第二卷どころかその予告や広告すら発見できなかったそうだ。そしてそれは昭和九年に発行された『川端康成集 第一巻』(装幀=芹沢銈介)でも同じことだった。曾根氏は遠回しにこう判断されておられる。

《造りの重厚さや美麗さにもかかわらず、著者が本にしたいと思っている作品を、何でもいいから一冊にまとめてしまえと思って作った本のようにも見えかねない。》

とりあえず他所の版元が出さないうちに囲い込んでおこうということか。横光で言えば雑誌『改造』に掲載されて大評判となった「機械」が白水社から刊行されたのが改造社としてはよほどシャクだったのだろう(『機械』は佐野装幀本の代表作の一つである)。その拙速を尊ぶこころ(?)で作られた『川端康成集』の場合、川端が秘かに自信をもっていた文芸時評が著者の意向を受けて十一篇ほど採られている。これが文芸時評の収録された川端最初の本になった。瓢簞から駒である。
by sumus_co | 2011-10-07 20:45 | 佐野繁次郎資料
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