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杉山平一全詩集![]() 『杉山平一全詩集 上』(編集工房ノア、一九九七年二月一日)、『杉山平一全詩集 下』(編集工房ノア、一九九七年六月一日)、杉山平一『戦後関西詩壇回想』(思潮社、二〇〇三年二月二日)。 先日の記事「詩人2, 3, 4」で杉山平一の詩「三角」を引用した。その作品が単行本に収められたのかどうか気になっていたのだが、全詩集を取り出して調べてみると、どうやらどこにも再録されていないらしい。昭和十八年に詩集『夜学生』(第一芸文社)が出て、二十三年童話集『背たかクラブ』(国際出版)、二十七年の『ミラボー橋』(審美社)と著作が続く。「三角」が入るとしたら四十二年の『声を限りに』(思潮社)だろうが、見当たらないようだ。次は五十二年の『ぜぴゅろす』(潮流社)となる。 それにしても、どうして全詩集など持っているのだろう? 考えてみると『BOOKISH 10』(BOOKISHの会、二〇〇六年七月一五日)「杉山平一 詩とシネマと散文と」という特集号に編輯をやっていた中尾務さんから頼まれて「「背たかクラブ」のわかりやすさ 杉山平一の散文を読む」という原稿を書いたのだった。その資料としてあわてて買い求めたものか? 元本が欲しかったのだが、手が出なかったのは確かだ。その証拠に古書価のメモが挟まっている(古書店の名前は略号にしておくので勝手にご推測を)。 夜学生 石 36,750 ミラボー橋 け 2,000 あ 6,090 新 9,450 森 15,750 背たかクラブ 新 31,500 あ 21,000 声を限りに じ 3,675 ぜぴゅろす ふ 7,000 天 6,000 『BOOKISH 10』が出た後、杉山さんご本人からお葉書をいただいた。拙文を読んで下さって反省したという内容である。それまでにも『sumus』を贈ったりしていたのだ。几帳面な方で必ず返事を下さる。肥田皓三さんと同じである。拙文の内容は杉山さんの弁証法的な論調を批判したものだった。その単純さに事物の的確な描写の見事さを対照させようとしたのである。今読み返してみてもさほど印象は変っていない。中尾さんもそれを認めてくれたようで杉山論のなかでは最初の川本三郎の次に置かれた。安水稔和さんを差し置いて。杉山さんの葉書には「巡航船」という散文詩を引用してもらってうれしかったこと、そして謙遜にも 《小生の弱点を突いて頂き冷や汗を流しました。ときに「わが学才」をかゝげてわからぬ評をかく人をからかったりする自分のおろかさを反省しています。評価されない事情がわかるようです。》 と書かれていて、こちらが冷汗を流すこととなった(以前にも一部紹介していた)。当時九十二歳(ということは現在九十七歳)でこの明晰と謙譲には頭が下がる。中原中也や立原道造と友達付き合いしていた人がまだお元気なのはじつに心強い(そう言えば東には吉田秀和がいるが)。《評価されない事情》という一言が杉山さんらしいこだわりで、これこそが杉山文学のエネルギー源かもしれない。 ![]() 『BOOKISH 10』を読み返して思い出した。杉山全詩集は街の草で買ったのだった。そう高くなかったし、何より、寺島珠雄さんの追悼市会で落したものということで、献呈箋からみても寺島旧蔵書だったに違いないと思ったからだ。まったく読んだ形跡はなかったけれど。 見返しの上に載せたメモは『戦後関西詩壇回想』の手作り索引。索引があればこの本はぐっと価値を増すのに惜しいことだ。嘆いているヒマがあったら自分で作りなさいというわけ。『詩人』が出てくるかどうか見てみると、ありました。 《編集実務は京都在住の長江道太郎がとり、竹中郁が、神戸から赴いて手伝った。長江は旧制広島高等学校時代から、イナガキ・タルホに、ミチタル・ナガエなどといわれる交遊があったが、「詩と詩論」に、竹中郁のシネ・ポエム「ラグビー」の論評を最も早く発表した人である。戦前に逸早く『映画・表現・形成』という今も高く評価される映画理論書をあらわしているが、京大の国文を出て、草野心平の「歴程」同人で、詩の言語、韻律の研究者でもあった。 早くから竹中郁との交遊があり、その繊細な美意識が本造りにもあらわれていた。 表紙を庫田叕にデザインさせている。わが国の文芸雑誌の表紙は、戦前の、佐野繁次郎の手になる「文芸」が美しいが、この京都の「詩人」の表紙の字とデザインも、それに比肩するものと私は思った。》 三頁にわたって『詩人』を紹介しているのがさすがである。「ミラボー橋」や山本沖子についての文章など当時の杉山さんにとっては重要な発表の場であったから当然かもしれないが、日の当らない雑誌を紹介しようという杉山さんらしい弁証法的(へそ曲り的)発想のようにも思えるのだ。 そんな杉山平一さんの編んだ貴重な詩集『布野謙爾遺稿集』(布野哲爾、一九四一年八月二〇日)がネット上で公開されている。必見である。 ふの けんじ【布野謙爾】『布野謙爾遺稿集』1941 http://libwww.gijodai.ac.jp/cogito/library/hu/FunoKenji.html
by sumus_co
| 2011-09-30 22:11
| 古書日録
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