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詩人2, 3, 4![]() 『詩人』創刊号については以前紹介した。幸運なことに最近さらに三冊入手できた(善行堂にて)。これで1〜6の内の四冊が揃った。 雑誌『詩人』(矢代書店、一九四七年一月一日、表紙=庫田叕) http://sumus.exblog.jp/8909163/ 検索してみるとPDFの形で堀部功夫「京都で刊行された詩誌『詩人』」が閲覧できる。『詩人』の総目次と戦後の詩史で軽く見られて来た経緯、およびその実際的な意義などが説かれていてたいへん参考になる。詳しくはそちらをのぞいていただくとして、ここでは二号掲載の詩を三篇、小野十三郎の「地下の夜](『抒情詩集』爐書房、一九四七年に収録、ただし改行と仮名遣いが異なる)、杉山平一「三角」と山本沖子「破れた絵本」(『花の木の椅子』創元社、一九四八年に収録)を引用しておく。 地下の夜 小野十三郎 終発が出た。 もはや人かげもない。 おや、しかし何かが ぼろのやうなものが あすこに とざされた捲土扉の前にまるくなつてゐる。 しづかないびき声さへきこえる。 電燈は朝までついてゐるか。 打水をした地下は 煌々と明るい。 ○ 穴の奥に またたきもなく ただ一つ消え残つてゐる橙色光。 真暗な夜の川がその上をながれてゐる。 ○ 風がある。 木生羊歯のにほひだ。 三 角 杉山平一 積木の中の三角が木が好きだ。町売 りのアイスクリームの容れ物のかた ちや、道化の帽子のかたちとしてで なく、積木を建築に見せるてつぺん にあるものとして。それは塔の上に つねに高く、記憶のかすみの上に雑 踏を超えて立つてゐる。 破れた絵本 山本沖子 美しいプウシキンの詩の絵本をもつて 私は門のそとにたつてゐた そこへ二匹の山羊がきて 私の本をとつて食べはじめた 私は悲しくなり さまざまにして やつと喰ひちぎられた絵本を ひしと胸に抱きかへした その時二匹の山羊はとつぜん 美しい顔の 乞食のやうな二人の少女の姿にかはり 少女はうすぐらい蒼ざめた顔をふせて 手にもつたかけた茶碗に 溝の水を汲んで食事をはじめた 私はひどく悲しくなり 倉のなかへかけて入り 鉄の扉をかたくとざして 深い病の暗い胸に 破れた絵本をひしと抱き プウシキンの 軍人さんやお嬢さんや ロシヤの夜の青い月を夢みてゐた 泣きながら 私は夢みてゐた。 清水正一は昭和二十二年の初めに『詩人』創刊号に出逢った。『詩人』の新鮮さと存在の意義がよく分かる回想のように思うのでその一部を引用しておく(『犬は詩人を裏切らない』手鞠文庫、一九八二年九月二〇日、より)。 《「それにもかかはらず神々は死んでしまった」それにもかかわらず……と、自分は胸のなかで、つぶやかざるを得なかった。 終戦の翌々年(昭和二十二年)のはじめに京都から出た「四季」系統とみられる『詩人』創刊号(責任編集・竹中郁・長江道太郎)の扉にあげられた言葉である。言葉は月桂樹の葉のようなもので飾られていた。表紙裏のシベリア色ならぬスイッチョ?といい、わたし好みの清楚な意匠であった。敗戦後の混沌とした暗い早春の日に、大阪駅前の本屋でこれ(『詩人』)をみたとき、しばらくはそこを離れられぬやうな感銘をおぼえたのも事実である。 くに やぶれて さんがあり。 別の意味こそ重大で、根のふかい帰郷者[ぽえと]の悲しみのようなものが霰の如くわたしに降った。》 《日本の海・陸精鋭は草も生えぬまでに全滅したのに、『詩人』の堂々たる目次に皮肉や「サムライ日本」を痛感した。》 《『詩人』の目次をひらくと、杉山平一はじめ、気にかかっていた詩人、好きな詩人、親しめぬ詩人、虫のすかぬ詩人、オオ!ここにこうして生きている、という感激のようなものもこみあげてくるのだ。》 * 家庭の事情によりしばらくブログを休みます。ご心配なく。
by sumus_co
| 2011-09-18 20:44
| 古書日録
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