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文士が体験した関東大震災

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『図書』九月号(岩波書店)に川本三郎「文士が体験した関東大震災」という記事があったので読んでみた。荷風、潤一郎、龍之介、黒澤明、佐多稲子、林芙美子、井伏鱒二、北原白秋のその日が取り上げられている。黒澤明は文士ではないけれど、なんと、この日(大正十二年九月一日)の午前中、丸善へ洋書を買いに行ったのだそうだ。あの倒壊した日本橋の丸善へ! 中学生だった。残念ながら(いや幸いなことに)店はまだ閉まっていた。仕方なく小石川の大曲にあった家に戻った。もし開いていたらわれわれは黒澤映画を見られなかったわけである。

川本氏が引用しているなかで井伏鱒二の話(『荻窪風土記』より)がいちばん眉唾モノ。

《二十五歳の井伏鱒二は早稲田に下宿していた。町が壊滅したので故郷、広島県の福山まで帰ることにする。
 東海道本線は大打撃を受けて不通だが、中央本線は立川まで汽車が来るという。これに乗るべく井伏青年は大久保駅から中央線の線路沿いに立川に向かって歩く。ここでも歩くことが大事になる。途中、中野の民家に泊めてもらい、翌日立川にたどり着く。》

早稲田(下戸塚)から中野で一泊ということは、たかだか四〜五キロの距離だから夕方歩き始めたのだろうか。『荻窪風土記』が今手許にないので細部が分からないが、じつは早稲田界隈にはほとんど被害はなかった。

《関東大震災発生。早稲田地区の被害は些少。同じく被害の少なかった神楽坂には東京各地から大店が集まり「山の手銀座」と呼ばれる賑わいをみせることになる。新宿の発展もここから始まった。》(向井透史『早稲田古本屋街』年表)

そう言えばカフェー・プランタンも神楽坂へ引っ越したのだった。井伏は単純に大地震にたまげてすっ飛んで帰った、そういうことだろう。むろん賢明な判断である。

以下は『大正大震災大火災』(大日本雄弁会・講談社、一九二三年一〇月一日)より。「東京火災地域及罹災民集団地図」、斜線が燃えた地域、赤く塗りつぶされているのが避難場所。
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《丸の内に厳然として控へた彼の豪壮な警視庁の第建築も魔の舌の如き猛火には敵すべくもなかつた、今や炎々として燃えさかりつゝある光景である。》
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三越も白木屋もそして丸善の燃え落ちた写真も載っているが、例の浅草十二階をかかげておく。
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「惨澹たる上野竹の台の二科会々場」《折柄招待日であつた上野竹の台の二科会場では、突如として起つた大揺れに美々しく陳列した絵画や彫刻は或ひは落ち或ひは倒れ、名家半歳の苦心の作も一瞬の後には此くの如き無残な状態となつて仕舞つた。》
文士が体験した関東大震災_b0081843_2162592.jpg

関東大震災の体験記では尾崎一雄の自伝『あの日この日』の該当部分が見事だと思う。尾崎は早稲田の学生だった。夏休みで小田原の実家に帰っていた。九月十日まで休みのはずだった。一歳年長の井伏も早稲田だったが少し前に中退して働きながら小説を書いていた。もし学生だったら帰省していたかもしれない。尾崎の描写を読むと小田原あたりは東京よりも揺れがひどかったようである(東京は火災)。『大正大震災大火災』に載っている近県震害情況(九月十三日迄ニ判明シタル)によれば、小田原は倒壊・焼失家屋5000、死者230、全滅。以下めぼしい市の被害。

藤澤 7000、100、全滅
鎌倉 6300、500、殆ンド全滅
横須賀 12000、500、殆ンド全滅
横浜 73000、24000、殆ンド全滅
by sumus_co | 2011-09-07 22:22 | 古書日録
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