『古本倶楽部』243号は子どもの本特集。掲載されているのらくろシリーズの大胆なデザインにあらためて驚かされた。函と表紙。

曹長が昭和十年初版、小隊長が昭和十一年初版、どちらもお値段はあっと驚くタメゴロ〜〜。伍長は重版らしいがそれでも立派に出世している。
本棚を見回しながら講談社の少年倶楽部文庫『のらくろ漫画集』一〜四(一九七五〜七六年)をかろうじて架蔵していることを思い出した。これにより『少年倶楽部』昭和六年一月号から十六年十月号までの連載を通して見られるのだが、連載第一回ののらくろの姿と十四年五月号で猛犬連隊を去るときの姿を比較してみるとはなはだ興味深い。初めはやはり犬らしく描かれていて、ほとんどずっと四つ足で活躍する。ところが除隊するころにはもう完全に着ぐるみの人間である。

昇進するに従って人形のように単純化され、だいたい伍長のあたりから手足はまるでドラえもんのようになっている。このあたりの変化を第三巻の解説で手塚治虫はこう書いている。
《イギリスのパンチ等の影響をうけたバタ臭さとオーソドックスさを、田河さんも持っていた。ことに初期の短篇(漫画の鑵詰、漫画常設館など)にはクラシックともいえる硬さが目立つ。ところが田河さんは円熟するに従い、それにまったく独自な効果を付加していったのである》
《その濃厚なオリジナリティは、たちまち少年倶楽部ほかの読者につよい印象を与えてしまったのである。例えば、あの独特な歩いたあとの砂煙の表現である。のらくろの初期には、これが単なる煙なのだが、蛸の頭にも似た異様な効果をもって、強烈に画面にのさばり出すのは曹長の頃からである。》
そして田河水泡の成功した主人公がのらくろも含め《一種のアウトサイダーである点が重要な役割を果たしている》ことに注目しているのは当然ながら重要であろう。なお昇進の順は、二等卒・一等兵・上等兵・伍長・軍曹・曹長・少尉(小隊長)・中尉(中隊長)・大尉(守備隊長)。一介の野良犬がここまでのし上がってしまった。大将まで昇進させてもいいようなものだが、ここで依願退官して資源開発に力を尽くすという筋立てが、またヘソマガリである。何はともあれ玉砕まで行かなくて何よりだ。
キャラクターグッズに囲まれた田河水泡。
田河水泡はむろんペンネーム。高見沢路直(たかみざわ・みちなお)は一八九九年東京生れ。一九二二年日本美術学校図案科に入学、同年「三科インデペンデント展」に出品、翌年「マヴォ」に参加。同グループの最左派として多岐にわたる活動を行った。その時代の高見沢の作品のひとつがこれ(『大正期新興美術運動の研究』より)。

「カント二百年記念塔模型」(『建築新潮』一九二四年五月号掲載)。ダダである。パンチの影響どころではない。だからのらくろの破天荒さの大元はダダなのだ。いや高見沢の破天荒さがダダを選ばせたと言うべきか。とにもかくにも、のらくろの装幀にはシビレル。