
浅生ハルミン『三時のわたし』(本の雑誌社、二〇一一年八月二〇日、装丁=川名潤)を頂戴した。どうしてかというと、小生もチラッと登場するから(でしょう)。ありがとございます。ハルミンさんの絵と文をたんのうできる素晴しい一冊。二〇一〇年の一年間、午後三時に何をしていたのか、ということを絵と短い文章で記録した本。はっきり言ってハルミン・ストーカーになった気分にひたれます。

ハルミンさんとは二三度しか会ったことはないが、面識のある美術系女子アーティストではベスト3のひとり。もう一人は武藤良子、あと一人は内ザワ先生かな。三人三様、文武両道にひいでている。その武藤さんも六月二十二日に登場。武藤さんのアトリエで個展の宛名書きをハルミンさんは手伝った。
《アトリエはもう使われていない小学校の教室。武藤さんが「ハルミンさん、いいもの見せてあげっから、こっちこっち」と言うのでついていくと、校庭の隅っこの木陰に大きな水鉢があって、小さなおたまじゃくしが水面を覆っていた。散り散りに浮かんだ水草にからまったり、乗っかったりしていた。このままするすると身体のなかに入ってきそうなくらい活発な泳ぎ。》
無邪気な、でも何かとても大事な風景だ。また田村治芳さんが何度も登場しており(ハルミンさんは『彷書月刊』で十九年も連載していたんだねえ)、ビミョーに似ている似顔絵が田村さんのいくつかの決定的な側面をとらえていて感心してしまった。
いずれにせよ、この本は浅生ハルミンの過去(DNA分析によるルーツまで!)、少女時代、そして昨年の仕事から衣・食・住、交遊、何よりもその心の内側まで、ほとんど丸見えの《自分を標本箱に据えてピンで留めたような》内容だ。ファンならずともハルミンさんの属する女性層の心理に興味のある向きには必読。小生はやはり筋の通った古本者でもあるハルミンさんに同感してしまう。
五月十七日
《神保町の田村書店の前にいる。今日は古書の先輩方の姿が少ない。均一台の本をひとりじめして、『庭にくる鳥』という写真集を見つけた。佐伯敏子さんというかたが撮った、庭の小鳥の写真集。昭和三十七年の本。かっぽう着姿でカメラのレリーズを持つこのひとの姿も写っている。この写真一枚のためだけでも買いたいと思った。前に勤めていた会社の社長が言った、「アサオさん、これどうしよっかなーと迷う本があるでしょう。でも本は、いいページがひとつでもあったら買うんですよ。あとから必ずよかったって思いますよ」という言いつけを私は守っている。》
十二月二十七日
《本を買いに出かけている。地元と渋谷の本屋さんを覗いてから、神保町までハシゴした。本屋さんにはそれぞれの色合いがあり、出たばかりのぴかぴかの本、小さな出版社の味わい深い少部数の本、古本屋さんでしか見られない本たちが、「私はここよー」と自分の歌をうたっている。そんな中にいると、やっぱり東京はいいなあ、はなれたくない!と思う。》