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和田誠展 書物と映画![]() 『和田誠展 書物と映画』(世田谷文学館、二〇一一年七月三〇日、デザイン・レイアウト=和田誠)を頂戴した。九月二十五日まで開催中の和田誠展の図録である。 和田誠展 書物と映画 世田谷文学館 http://setabun.or.jp/exhibition/wadamakoto/ 和田誠の仕事場を訪れた人に聞いたところによると装幀本はすべて揃っているらしい。しかも何千冊(何万冊?)あるか知らないが、すべて読んでから装幀にかかるということだ。とするとものすごい読書量になろう。ジョイスもみんな読んでいるわけだしね。本書の表紙になっているジョイスを読むマリリン・モンロー。これはシャレじゃない。 《ポスターのために描いた「ジョイス『ユリシーズ』を読むマリリン・モンロー」は、「書物と映画」というタイトルのためにこじつけた組み合わせだろう、と思われた方がいらっしゃるかもしれませんが、これは架空の組み合わせではないのです。劇作家アーサー・ミラーと結婚していた時期に、ご亭主が彼女に薦めたのかもしれません。実際に彼女が『ユリシーズ』を読んでいる写真もあります。その写真の存在をぼくに教えてくださったのは、ジョイスの研究家でありジョイスの翻訳家でもある丸谷才一さんでした。》 と、その丸谷才一が「ルネサンス人をたたへる」という一文を寄せている。まず文化万能の和田誠をほめちぎっておいて、和田が苦手なこと、それはスポーツだと述べる。そしてジョイス研究家らしく『若い藝術家の肖像』を持ち出す。 《彼の自伝的長編小説『若い藝術家の肖像』には、幼い学校時代、主人公がどんなにサッカーが下手であつたか、じつにいきいきと描いてあつて、さうだらうな、ジョイスは子供のころ弱々しい少年で、スポーツは大嫌ひだつたに相違ないと誰だつて思ふやうにうまく書いてある。しかしあれは大嘘なんですつて。 ジョイスはスポーツ好きで、クリケットはとりわけ上手だつたらしい。それなのに、藝術家志望の主人公を描く都合上、スポーツ嫌ひに仕立てたものらしい。小説の読者のモデル的関心を逆用してゐる。どうも油断がならないね。》 ジョイスは歌もうまかったらしいからきっといわゆるゴールデン・ボーイだったのだろう。 あまりにも沢山似たような仕事をしているので、空気みたいな存在になってしまっている和田誠の装幀やイラストレーションなのだが、あらためて眺めてみると(といってもここに載っているのはごくごく一部)いい仕事している。村上春樹訳のアーヴィング『熊を放つ』(中央公論社、一九八六年)はもっとも好きな一冊。 ![]() 和田誠にはいくつかの描画パターンがある。けれどもどんな手法をとっても似顔絵はウマイなり。二色のテクニックもさすが也。 ![]() ![]() ![]() 和田とは無関係なのだが、『チャップリン作品集』や『トリュフォー作品集』の表紙を見ていて、ほほうと思った。チャップリン映画の邦題はほとんどみんな直訳である。「サーカス THE CIRCUS」「犬の生活 A DOG'S LIFE」「キッド THE KID」「街の灯 CITY LIGHTS」……。ところがトリュフォーはちと違う。「噫無情」以来の伝統なのか、意訳に名訳がある。 大人は判ってくれない LES QUATRE CENTS COUPS(四百回の殴打) あこがれ LES MISTONS(子供たち) 突然炎のごとく JULES ET JIM(ジュールとジム) もちろん「ピアニストを撃て TIREZ SUR LE PIANISTE」や「二十歳の恋 L'AMOUR A VINGT ANS」などはそのままの訳だし、直訳ふうながら「VIVEMENT DIMANCHE!(早く日曜日)」の「日曜日が待ち遠しい」はうまいと思う。 ![]() 自作映画のシナリオ原稿も載っている。ただ惜しむらくは書誌(イラスト、映像や音楽作品についても同じく)データをもっとちゃんと記載しておいて欲しかった(資料頁は和田誠事務所が編纂したと断り書きがあるようにタイトルと版元を並べただけの出品目録しかない)。この点だけにこだわれば、こういう回顧展のカタログは当該の作者が自分で編集しデザインしてしまうのも良し悪しだなという気がする。イラスト集として楽しめるのは言うまでもないけれど。
by sumus_co
| 2011-08-19 21:38
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