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ジョゼフ・コーネル

ジョゼフ・コーネル_b0081843_2064912.jpg

一九九二年十一月から十二月にかけて滋賀県立近代美術館で開かれた「ジョゼフ・コーネル展」の図録(読売新聞社/美術館連絡協議会、一九九二年、デザイン=武田龍二)を入手した。かつて千五百円で目録に出ていたのがハズレ、今回は二千百円で出ていたのでハズレを覚悟で葉書を出したら当った。うれしい。

これは神奈川県美他でも開催されているが、大規模なコーネル展としては初めてのものだった(《日本で最初の回顧展である》とチラシにある)。小生が見たのは、日記によれば、十一月十七日火曜日。滋賀では十四日から始まっていたから早々に飛んで行ったことになる。当時は神戸に住んでいた。

《9:20発JR三ノ宮から新快速近江舞子行に乗ったまでは良かったが、山科でのりかえなければならないのが分からず湖西線に入って湖が右手に見えて来たのであわてる。叡山で降りて、10:45の京都方面行で山科まで引き返し、琵琶湖線へ乗り換える。瀬田は各停だけなので石山で降りてまた待つ。駅前すぐに農家がある瀬田駅に着いて、発車まぎわの医大行バスの飛び乗る。文化センター前下車、庭園の中へ踏み込んで、岩のぼりしつつ、ぐるりと入口まで。まったく案内表示くらい出してほしい。ジョセ[ママ]フ・コーネル展。箱作品38点出ていたらしいが、いずれも大して大きくないせいぜい大きいもので6号大くらい、小さいのはカマンベールの箱くらいのものから。箱は手作りなのだろうが、色工合といい、マチエールといい、なんとも魅力的。はるばる来た甲斐があった。》

瀬田まで片道1,590円かかっている。バスは170円だった。道に迷ってばかりだが、庭園じゃない方の入口から入れば良かったんだね、今考えれば。

コーネルは一九〇三年一二月二四日、ニューヨーク州ナイアック生れ。十四歳で父を亡くし、母と脳性麻痺の弟ロバートといっしょに二人が亡くなる一九六〇年代半ばまで暮らした。美術教育は受けていないが、十代から美術、音楽、映画、舞台などに親しみ、コレクター的な性格を発揮していたようだ。足繁く通っていたジュリアン・レヴィ画廊でエルンストの『百頭女』を見て、その影響を強く受けたコラージュ作品を作った。それをレヴィに見せたところ、レヴィは驚いて一九三二年に初めての個展をすることになった……と、最近、評伝の邦訳も出たので生涯の紹介はこのくらいで。

コーネルはニューヨークの画廊や古本の露店を巡り歩くのが好きだった。

《コーネルは「毎週, 四番街の古本屋を巡るグランド・ツアーを何よりも豊かで意味のあったこと」註12)と述べている。14丁目とアスター広場の間に集中していたこれら露店は, 古本の宝庫であった。それらの古本の多くは見事な挿絵が入っていた。ここでコーネルが買った書物の数々は, その後25年間の彼の人生と作品に養分を与えた。》(本図録所載、サンドラ・レナード・スター「ジョゼフ・コーネル:黄金蜂ホテル」より)

「註12」は1968年6月に書かれたコーネルの書簡に見える回想だそうだ。ちょうど買ったばかりの一九一六年のニューヨーク地図があるので該当地域を引用しておこう。

ジョゼフ・コーネル_b0081843_210502.jpg

また一九五〇年代のコーネルのマンハッタン歩きについてこうも書かれている。

《ロウアー・フィフス・アヴェニューにあるシャックマン玩具店へと足を運び、楽しげな動物たちが色鮮やかに描かれた積み木セットを見つける。次に, 切手コレクターのための専門店へ行く。目録に目を通して, 美しく彩られた蝶の切手セットを買う。それから露店の古本屋で天文学についての古びた本を手に取る。いくつかのページにはカシオペア座が描かれている。これも買い求めて, カササギよろしく, ユートピア・パークウェイの隅々に他の宝物と一緒にしまい込む。》(同前)

惜しくもコーネルが歿したのは一九七二年一二月二九日だった。ここで惜しくもというのは別の意味がある。五歳年下の植草甚一が初めてニューヨークに降り立ったのは七四年四月、もう少し早ければ、やはりコラージュの名手であった植草がコーネルと同じ古本の露店を冷やかしたりするミラクルも起こり得たのになあ……これが惜しい。

by sumus_co | 2011-08-09 20:07 | 雲遅空想美術館
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