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龍南物語

龍南物語_b0081843_1957782.jpg

上田沙丹『五高生活 龍南物語』(稲本報徳会、一九三九年九月一〇日七版、一九一八年六月一日初版、装幀=山田隆憲)。熊本、旧制第五高等学校の明治末から大正初め頃にかけての学生生活を描いたエッセイ集。著者上田吉郎の写真と略歴が巻頭口絵に載っているので少し省略して引用しておく。二十七歳という早逝である。

 明治二十六年十一月三日 鹿本郡山東村ニ出生。牧野喜久太三男
 明治四十年九月 熊本地方幼年学校入学
 明治四十三年九月 東京順天中学入学
 明治四十四年四月 熊本県立中学済々黌転学
 明治四十五年四月 熊本県立八代中学転学。同二年卒業
 (上田仙太郎養子トナル)
 大正二年九月 第五高等学校独法科入学。同五年卒業
 大正五年九月 東京帝国大学独法科入学。同八年卒業
 大正八年八月 大正日日新聞社入社。同十一月上海特派員トシテ派遣
 大正九年七月十日 於上海客死

龍南(りゅうなん)は五高の異称で龍田山の南に位置したからという。校友会雑誌も『龍南』(初め『龍南会雑誌』)と言い、例えば大正十年四月(旧制高等学校は大正八年より四月入学)に五高文科甲類に入学した上林暁が『龍南』の懸賞創作に応募した「岐阜提燈」は三等に入選した。
 
本書の「牛飲馬食の機関」と題された一編には「水谷」というカフェーが登場している。

《「いろは」は肉屋、「東京庵」は蕎麦屋、水谷はカフエーの名で三四郎が此上もない鬱憤の晴らし場である。学校内にも大きな娯楽室があつて何でも売つてゐるけれども、肝心な液体がない。それで一寸昼食の用を足す位なものに過ぎぬ。》

《各学校の教育家を網羅して組織された学生保護会なるものゝ指金でいろんな取締規則が出る。学生を上げた料理屋や、学生にお酌をした飲食店の女には、手厳しい制裁が申渡されてあるが、そんなものは当にならぬ。サーベルの威厳もそんな処まで行き届くべき筈はない。》

《嫌ですよ、灰殻角帽の医学生、
 私の好きは、龍田五高の白三筋
 破れ袴に杉の下駄、
 剛毅朴訥ありのまま。

と媚びを湛へて唄つても、紅灯の家はいつの間にか自滅して行き、
「試験前ですばい。どぎやん(どんなに)云ひなはつても今夜は一杯も飲ませんばい。」
「おのれ糞老婆!! 飲ませ。」
「糞老婆といはれても飲ませまつせん。早う戻つて勉強しなはりまつせ。」
と苦言を吐くカフエーは日一日と繁栄して行くのである。
 カフエー水谷は通町にある。正直で親切な婆さんの余徳はその名得意のトンカツよりも高く、初更から三更まで蛮歌蛮声絶えたことはない。勇将の下に弱卒なしで給仕女でも男乎女乎族の錚々たるものである。偶々新らしい色白い奴がくると抗議が出る。
「婆ァ、彼の今度きた奴は駄目だぞ。乃公に色目つかつたよ。」
 彼女は直にお暇を頂戴いたす。水谷の主人の気象を誰かが新聞で青竹を割つたやうだと書いた。それ以来、水谷に行くことを青竹を割ると云ふやうになつた。特に懸けで飲むとき然り。
「婆ァ、今晩も青竹割るんだよ。」
「はい。」》

上林暁も水谷に出かけた口だろうか? なお未成年者飲酒禁止法は大正十一年制定という。

  *

もう一冊、大阪朝日新聞経済部『商売うらおもて』(日本評論社、一九二五年一〇月一日)に「一三、妾や後家さんの喫茶店 お客の舌をゴマかす珈琲紅茶」という記事を見つけた。

《近ごろ大流行の喫茶店。水商売にしては、大した資本は要らず、女手でもやれるといふのが取柄で盛んに後家さんやお妾さんに狙はれるところは先ごろの煙草屋、小間物屋そつくりである。自分は黒梳髪黒襟でキヤツシヤーと納まり、お客の取りなし万端は太子髷のウエートレス任せ。水色のカーテンをかけたり、未来派のつもりでもあらうところの洋画でも飾り立てればそれでニキビ党はもとより、甘党の薬缶親爺にとつてもこよない楽園が出現しようといふのだから気楽なものだ。》

「未来派のつもり」とは言い得て妙。次にコーヒーの原価計算がなされている。

《モツカ一ポンドの小売値段が一円三十銭、ジヤバのものはズツト下つて九十七銭、一流の店ではこの二ツを等分に混じて使用するが、これでウンと味を濃くしたものは瓦斯代砂糖代を含めて一杯の原価約八銭五厘から九銭で、十銭に売つては商売にならぬ。そこで大抵はモツカ二のジヤバ八ぐらゐ、場末などでは全然モツカぬきと来る。だから一杯十銭に売れば六銭は儲かる。》

さらに紅茶、ソーダ水、サンドイッチ、アイスクリーム、菓子の原価と売値のさまざまなランクを数字で説明しているのが参考になる。輸入紅茶は奢侈関税十割だそうだ。

《大体一流の店で平均四割の純益、二流で五割、三流になれば六割以上で、この社会でもグレシアムの法則が気遣はれてゐる。一日の売上高にして見れば五六十円見当から、悪くて二十円ぐらゐ。》

グレシャムの法則とは「悪貨は良貨を駆逐する」 として知られるもの。

《最近大阪に、あわたゞしい出入りを嫌ふお客を歓迎するといふのでコーヒー一杯三十銭といふ店が出来た。その代りコーヒー一杯で何時間遊んでゐても厭な顔をせず、チツプも戴きませんといふのだ。こゝにも旋毛曲りの現代人の商法がある。》

この当時、喫茶店ではチップが当り前だったようだ。

《喫茶店では酒類は売らぬ。だから喫茶店は届書一枚で何どきでも開業出来るが、酒類を置くとなるとなかなか許可が得られない。そこで考へたのが「家庭用」の酒類である。つまりコーヒーはお客の資格で、酒類は家族の資格で飲分けさせようといふ寸法。やはり裏には裏がある。》

「家庭用」の酒類とはどういうものだろうか?
by sumus_co | 2011-07-25 21:44 | 喫茶店の時代
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