
『古本倶楽部』258号(中野書店、二〇一二年二月)より。
*

『平成23年第46回明治古典会七夕古書大入札会』(明治古典会、二〇一一年七月一日)目録を100円で買った。もう終わっているので(むろん終わってなくても注文できるものはないだろうが)目の保養のつもりで眺めていると日本図書出版の『根津権現裏』(一九二二年)の無削除本が出ていた。西村賢太によれば無削除本の寄贈本の中には藤沢清造自身が赤ペンなどで伏せ字部分を起こしたものが数種あるという。西村氏は無削除献呈本四冊を参照して新潮文庫版のための復元を行ったそうだ。

こちらはある古書目録に掲載されていた聚芳閣版『根津権現裏』(一九二六年)。
*

個展初日に来場されたOさんより『根津権現裏』(新潮文庫、二〇一一年七月一日)を見せられ、新刊情報にうとい当方はびっくりして、さっそく丸井(旧・阪急百貨店河原町店)のふたば書房で購入、メリーゴーランドで読みはじめる。
このくらいのものが書ければ、作家として簡単に亡びるはずはないようにも思うのだが、大正末になると川端康成や横光利一らの若くて新鮮な作家たちが登場し、プロレタリア文学も力を得て来る。その流れのなかでは、田山花袋に激賞されたということこそ、ある意味、不運の始まりだったのかもしれない……。新潮文庫版『根津権現裏』、年譜も付いて、514円はお買い得であろう。