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灘渡る古層の響き

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題 名=灘渡る古層の響き 平島放送速記録を読む
発行日=2011年7月15日
著者等=稲垣尚友[文] 大島洋[写真]
発行所=みずのわ出版
装 幀=林哲夫
用紙等=
 カバー ミルトGA スノーホワイト 四六判Y目135kg
     特スミ1° 特色1° PP
 表紙  里紙 なのはな 四六判Y目100kg スミ1°
 見返し 里紙 銀 四六判Y目130kg
 別丁扉 里紙 きび 四六判Y目100kg 特色1°
 本文 MTA+-FS 菊判T目76.5kg 特スミ1°

トカラ諸島(鹿児島県鹿児島郡十島村)の平島(たいらじま)に住み、五十年後に島の様子を伝えるべく成された記録、そのうちの「放送記録」をまとめたもの。著者稲垣氏は大学中退後宮本常一の主宰する日本観光文化研究所でアルバイトをしたことから南西諸島の人と自然に魅了され、地名採集のため島々を巡る。臥蛇島そして昭和四十八年より五十二年まで平島に住み着いた。島の人口は百名ほど。本書で取り上げられているのは昭和四十九年六月〜九月の三ヶ月弱の島内放送である。その放送を書き起こしたものと(付録CDあり)稲垣氏による解説文から成る。これがすこぶる面白い。

たとえば日本というもう少しだけ大きい孤島でも騒がしい電気の問題。本書「電球ということができないのです」の章は島内での電気料金徴収について。平島に発電機がもたらされたのは昭和三十七年。文部省の予算で学校のために設置された。これによって各戸に、夜間の二時間、四十ワット電球ひとつが灯った。昭和四十九年から給電時間が延長され朝夕の二度(午前六時〜八時、午後五時半〜十時半)になった。これにより冷蔵庫の製氷室の氷がかろうじて終日とけなくなったという。

《いま、先ほど、うちの会計から言われましたが、ほんとうに燃料の値上がりで、わたしどもは電気をつけるということは、非常に困っています。そういう点を十分にお含みいただいければ、皆さま方にはご迷惑をかけないと思っていますが、電気料ということは、電気をつけて明かりをつけたならば、もう、ほんとうに考えてもらわなきゃならん。》

《早く納めていただければ、われわれも、重油の値段も高く上がるということでございますので、いくらか安いうちに安くで買って、安くの電気でいこうかな、ということでございます。よろしくお願いいたします。》

三十軒あまりの家しかないのだが未納者は後を絶たない。この原因を稲垣氏は「トコロの物」と呼ばれる部落の共有物に対する認識に帰している。島では共同作業でできたものに対しての責任感が自然と薄くなるという(ああ、これはまさに税金無駄遣いの根底にあるものだ)。それをしっかり取り締まるのがセキニン(責任者)である。だから放送も頻繁になる。

こういう平島を支える互助・共同意識を「マグミ」という。

《ふたり以上の共同をマグミというが、それは、分け合うとか、分担し合うことが根底にある。労働を分担する場合や、収穫物を分配するときに現れる。》《マグミと表裏一体になったコトバに「ソウダン」がある。これは、「相談」とは違う。他者に物を分けてもらいたいときとか、特殊な工具を借りたいとき、あるいは、労力を提供してもらいたいときに使用するコトバである。ソウダンを受けた者は断ることは難しい。》《無条件で相手にソウダンをもちかけることができる。これは一見すると、「贈与の強要」ととらえがちであるが、マグミの中でのソウダンは強要ではなくて、ソウダンする権利を執行したにすぎない。》

またこういう一文もある。

《島内での物や労力の貸し借りは錯綜していて、そのつど収支決算をつけることは不可能に近い。》

だから過失に対する弁償は等価でなくともよい。謝罪の気持ちが表わされさえすればいい。それによって《相手を許し、これまでと変らない付き合いを再開することができる。つまり、秩序が回復するのであった。》

そうすると自然にこうなる。

《島で手に入るものを食し、島で調達できる素材を使っての家屋に寝起きすることになる。ひとりだけ抜け出した財力を保つことは不可能であった。また、島人の性癖として、突出した存在を嫌う向きがある。ひとりで早駆けしようとする気配が察知されたならば、周囲は力を合わせて、その人間の足を引っぱることもする。それは性悪な行為ではなくて、同じ背丈であることが、暮らしを確保する最善の道であることを知っているからである。》

ユートピアとか原始共産主義的な共同体ともいえなくもないだろうが……基本は「日本」というもう少しだけ大きい孤島にも貫かれている(いた)生き方のような気もする。だから外国人でなければ大きな変革はできないということになってしまう。同じ背丈の島民を、少数の金持と大多数のビンボー人にバッサリと分けてしまうには外国人が必要だったかもしれない。しかしそんなことでいいのか。「古層の響き」はさまざまに現在のわれわれの取るべき道を考える標となるように思う。

一九七〇年代に撮影された大島洋の写真がいい。八〇年代には大島氏は『写真装置』という雑誌を刊行して新しい写真理論を紹介することになるのだが、『写真装置』を小生も毎号楽しみに見ていたことを思い出す。

いい本になった。装幀もまずまずです。
[PR]
by sumus_co | 2011-07-01 21:52 | 装幀=林哲夫
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