四月と十月文庫「えびな書店店主の記」
出版記念トークイベント
対談 蝦名則 + 牧野伊三夫 司会=鈴木るみこ
日時 7月16日(土)15時〜17時
会場 東京堂書店神田神保町本店六階
参加費 500円(要予約)
東京都神田神保町1-17 東京堂神保町第1ビルディング
電話 03-3291-5181
http://www.tokyodoshoten.co.jp/
えびな書店さんとは付き合いが長い。といってもほとんど目録だけだが、きっかけは「青山二郎全仕事」という特集の目録を知って注文したのだったような気がする。ちょうどその少し前から青山二郎の装幀本を集め始めたのだ。本書によればそれは一九八九年の第五号らしい。えびな書店古書目録『書架』はそれ以後全冊保存してあるはずだ(郷里の書架に)。
全冊などと自慢げに書いているが、ふつう古書目録は、二、三回つづけて注文しないとまず確実に来なくなる。欲しい目録に関しては出来る限り毎度注文したいと思っている、思ってはいるが、そううまくいかないのが、ビンボー人のつらいところ。他店の目録が一日早く着いたりして注文してしまうと、遅れた目録では何も拾えなくなってしまう。しかし、ここがえびな書店の器量というのか、しばらく注文しなくても必ず目録を送ってくれる。この点はきわめて有難い。つき合いが長いといっても、買った本はタカが知れているから、これはえびな書店の方針であって、優遇されているというわけでは決してないようだ。
えびな書店から買った本で忘れられないのは先日も紹介した
『良寛遺墨集』。神戸の震災後、郵便が再開してはじめて届いた古書だった(多分、地震の直前に発送されていて、再開までどこかで滞っていたのだろう)。洲之内徹が出した雑誌『これくしょん』第一号(これくしょん社、一九五八年、創刊号のみで廃刊)はちょっと珍しいかなと思った。
アンリ・ミショーの個展(一九六七年)カタログもうれしかった。
本書『えびな書店店主の記』(港の人、二〇一一年六月二六日、画=牧野伊三夫)は「追い書き」と題された蝦名詔子(蝦名夫人)のエッセイから読むべきである。そうすれば店主の文章がいきいきと沁みてくる、そんなニクい効き目があるように思う。
《結婚したとき夫は無職だった。普通ならあり得ないことだが、親戚に保証人になってもらって就職した会社を一日か二日で辞め、次の会社ではコピーライターの養成講座に社命で行かされていたのをパチンコ屋で過したそうな。今考えてもハチメチャなことをしたものだ。自分が納得できないことは絶対しないという東北人特有の頑固さもあるのだろう。
編集者として努めた小さな出版社を退社してからはフリーランスで仕事を続けた。そして二十九年前、姑にもらったわずかなお金で古本屋を開業した。》
《私も働いてきたが、娘の誕生で一人の収入になり、二人で働いて一人前なのだから、長い赤貧状態が続いた。商売の経験もないまま本屋になってからも生活できるのかとても不安だった。赤貧からただの貧乏に格上げ? はしたが、暮らしぶりは大して変らなかった。ずいぶん後になって知ったことだが、好きな骨董品を購入し続け、女房子供にはぼろをまとわせていたらしい。》
どうです、こんなサイテーな男(書き写していて、他人事ではないことに気づいたけど)の書いた文章、読んでみたいでしょ。