村嶋正浩詩集『晴れたらいいね』(ふらんす堂、二〇一一年五月二二日)を「著者謹呈」として頂戴した。存じ上げない方なので、どういう理由でお送りいただいたのか分からないが、著者略歴によれば、一九四一年四月生れ、既刊詩集が六冊、日本現代詩人会会員、所属は詩誌『鰐組』、俳誌『澤』『翡翠』ということで、この詩集は『鰐組』に発表されたものから成る。
仲山清さんの『鰐組』は以前頂戴していたことがある。最近は御無沙汰だが。
二十五篇のうち二十四篇の詩がほぼ三十字二十行ベタで書かれている。原稿用紙一枚半。散文だったら、いちばんむずかしい字数だろう。文字組は上のようになっており、スキャンした頁はとくに「櫻」で埋め尽くされて形象性がはっきりしているが、いずれの作品も何かしら文字が作りだす形に注意が払われている。その意味では
高橋昭八郎『ペ/ージ論』と似通うところはあるものの、作品としては視覚に頼り過ぎずに無意味の意味を提示する姿勢で貫かれているようだ。
言葉の出会いとすれ違いがさざ波のように打ち寄せてくるのが心地いい。部分引用ではつまらないのだけれども、ほんの一例のつもりで「春は名のみの」より十行目から十四行目。
なのに、詩人が川辺でひとり泣き明かすともう朝ご飯の時間ですよ
と時計は叫ぶので、朝食抜きの子供は柳の鞭でぶちましょう、韃靼
海峡は冬なので裏の小薮に埋けましょか、葦は角ぐんでいてふっく
らご飯が炊けました、白子おろしが好物なので春大根を買った八百
とまあ、こんな感じ。
『晴れたらいいね』ふらんす堂 *