
Makinoさんより《白水社の奥付検印紙です。しゃれてますね! しかし、白水社はなぜ鶏なのでしょうか?》というメールとこの写真をいただいた。昭和十五年四月二十日発行のルナアル『博物誌』第三版。小生架蔵の『博物誌』を取出してみると、昭和十六年三月二十日の第五版で、おもしろいことに検印紙の色が違っていた。
どうしてニワトリなのかという問題だが、それはフランスの代表的映画会社のパテ(Pathé)がどうしてニワトリを使っているのかを調べてみて分かった。ル・コック・ゴーロワ(le coq gaulois, ガリアの雄鶏)というのはフランスの象徴であり、フランスの国鳥が雄鶏なのであった(なんとも恥ずかしながら今まで知らなかった!)。しかも曲線で図案化されたパテの雄鶏とこの白水社の雄鶏はかなり似通っている。真似したとも考えられるが、あるいは同時代的な嗜好かもしれない。
パテの雄鶏ロゴマーク
http://www.adobe.com/se/print/features/landor/
Cocorico... Notre fier symbole(コケコッコー、わが誇り高きシンボル)
http://rleb07.free.fr/satiric/cocorico.html
ちなみに現在の白水社HPを訪問してニワトリのロゴをクリックしてみると、その由来が漫画で説明されているのをご存知だろうか。それによればやはり『博物誌』の雄鶏から取られたのだそうだ(左右逆向き)。
http://www.hakusuisha.co.jp/
それはこちら、第五版の雄鶏のイラスト。この白水社版は一九〇四年のフラマリオン版を踏襲しているのでピエール・ボナールの挿絵になる。
戦後、一九五一年に刊行された『博物誌』は以前紹介したが、その奥付には逆向き雄鶏のデザインが使われている。今、把握しているかぎりでは、昭和十八年の検印紙にも見えるから、戦前から用いられていたことは間違いないだろうが、検印紙がパテ風で表紙4にボナール雄鶏の図案という例もある。
http://sumus.exblog.jp/7703373
ちなみに『博物誌』初版(Flammarion éditeurs)は一八九六年に四十五項目だけが刊行されて、表紙はフェリックス・ヴァロットン、挿絵はトゥールーズ・ロートレックであった。現在は
表紙もロートレックになった一八九九年版が復刻されているようだ(Sources, 2010)。下はMakinoさん所蔵のロートレック挿絵本(Jules Renard: Histoires Naturelles, Illustrations de Toulouse-Lautrec, Flammarion, Paris, 1961, p.3)より。

もうひとつ、白水社の検印紙はニワトリばかりだとは限らない。いくつもの種類がある。とくに江川正之がいた時代には凝ったデザインを使っている。江川が去った後、ニワトリに定着するのではないかと目下のところは考えておこう。