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藤澤清造全集内容見本

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藤澤清造全集内容見本_b0081843_19131299.jpg


二十八日の朝日新聞に「「破滅型作家」藤澤清造に脚光/西村賢太さん心酔 墓も隣に」という記事が出た。石川県七尾市西光寺の藤澤清造の墓のとなりに二〇〇二年に建立された西村賢太の寿墓が並んだ写真も。

藤澤清造全集内容見本はかつて朝日書林から配られたもの。全五巻別巻二で構成されるという。たしか古書通信に出ていた広告を見て注文した。立派な内容見本で圧倒されたが、その本体は某氏に差上げたので、今はコピーしか残っていない。よくぞコピーをとっておいたもの。西村氏による藤澤清造の《大大略年譜》をほんのかいつまんで引用しておく。

明治二十二年 十月二十八日、石川県鹿島郡藤橋村ハ部三十七番地に藤澤庄三郎、古ヘの第四子二男として生まれる。農家。
明治三十一年 父死去。
明治三十三年 七尾尋常高等小学校男子尋常科第四学年を卒業。活版印刷所で働く。右足の骨髄炎を患う。上京するまで職を転々とする。鏡花の小説を耽読。
明治三十九年 上京。
明治四十二年 弁護士野村此平の玄関番となる。
明治四十三年 弁護士斎藤隆夫の書生となる。徳田秋声、三島霜川を知り演芸画報社に入る。室生犀星と交遊。母死去。
大正二年 川村花菱作の舞台「熊と人と」で熊役を演じる。
大正三年 『演芸画報』六月号に署名入り記事が載る。
大正七年 友人らと稽古歌舞伎会を発足させる。
大正九年 『新潮』に「渠に云ひたいこと」発表。演芸倶楽部退社。小山内薫の世話で松竹キネマ入社。
大正十年 松竹キネマを人員整理により退社。「根津権現裏」執筆。
大正十一年 小山内薫の世話でブラトン社の非常勤編集者となる。三上於菟吉の尽力で『根津権現裏』(日本図書出版=小西書店の別会社)より刊行。
大正十二年 田山花袋が『根津権現裏』を激賞。『新潮』に「一夜」発表。関東大震災のルポルタージュを『改造』『中央公論』などに発表。
大正十四年 『演劇新潮』の編集同人となる。上荻窪で早瀬彩子と同居。聚芳閣より改訂版『根津権現裏』刊行。
昭和四年 『万朝報』に小説「謎は続く」を連載、中絶。
昭和五年 早瀬彩子と別居して下宿生活。
昭和六年 五月、『文藝春秋』に最後の小説「此處にも皮肉がある 或は『魂冷ゆる談話』」を発表。九月、『演芸画報』に「外は是蝉の声」を発表、絶筆となる。
昭和七年 空家へ入り込んで拘留される。一月二十五日より行方不明となり、二十九日朝、芝公園の六角堂内で凍死体となっているのが発見される。三十日、身元不明人として桐ケ谷火葬場で荼毘に付される。二月一日、彩子が検屍写真によって身元確認。十八日、徳田秋声らによって芝増上寺にて告別式が行なわれ、辻潤、近松近江、佐藤春夫、尾崎士郎ら百人を越す人々が集まった。

「『藤澤清造全集』編輯にあたって」で西村氏は藤澤清造に対する思いを縷々述べている。

《この人の、泥みたような生き恥にまみれながらも、地べたを這いずって前進し、誰が何と言おうと自分の、自分だけのデンディズムを自分だけの為に貫こうとする姿、そして、結果的には負け犬になってしまった人生は、私にこれ以上とない、ただ一人の味方を得たとの強い希望を持たせてくれたのである》

ラブレターである。そしてこう締めくくる。

《この全集さえ完結出来たら、もう、あとはいつ死んでもいい、全力で編輯にあたらせていただく。》

墓もあるのだから後顧の憂いはない。ガンバッテね。
by sumus_co | 2011-01-29 20:14 | 古書日録
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