『少年世界』大正四年十二月号(博文館、一九一五年一二月一日)の口絵。中澤偉吉「みかん」。イキチのサインあり。ただし検索してもほとんど何もつかめない人物だ。ひとつだけ、竹久夢二による一九二三年五月の「どんたく図案社」結成の宣言のなかに「同人」として中沢偉吉、久本信男、恩地孝四郎の名前が挙がっている。見るからに夢二、というかスミカズに通じるものがある。読者の方より情報を頂戴した。
《中澤偉吉は日本画家・中澤霊泉です。彼は『夢二行状記』(緑の豆本 第26期第102集)などの著書を残しています》
とのこと。こちらは二色刷りの扉絵。
「重きつとめ」というタイトル。これは兵士を描いたものらしい。そういえば赤いランセルすなわち背嚢をしょっている。
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編輯兼発行人は巌谷季雄こと巌谷小波(いわやさざなみ)。『少年世界』は小波のホームグラウンドであった。口絵写真より、松本市少年会にのぞんだ小波。説明には「中央は小波先生と小林安視君」とある。
そして「日比谷図書館で口演中の小波先生」、十月三十一日のようだ。
面白いのは通信販売の広告。われわれの少年時代にも、頭が良くなるとか、背が伸びるとか、空気銃だとか、スパイカメラだとか、魔法ペンだとか、その他色々な広告が載っていて、ヨダレが垂れたものだったが、大正時代も同じだったか。
広告を出稿している店がほとんど大阪(谷町筋を南へ、谷町六丁目から四天王寺あたりまでに分布)なのが、さもありなんと思わせる。
春光堂商店 大阪市東区東雲町三丁目
松葉号 大阪市東区東雲町一丁目百七十番邸
みかど商会 大阪市東区上本町九丁目一四三
みかど商会写真機製造部 同上
朝日堂商会銃砲部 大阪市東区中道黒門町
キング銃砲店 大阪市東区上本町五丁目
だんの商店 大阪市東区上本町九丁目
明石屋 大阪市東区松屋町通り本町南入
常磐号商店 大阪市南区高津線磐舟橋停留所前
〃 大阪市空堀谷町東入
日進堂 大阪市南区西賑町五十番地
砲翫堂商会製作所 大阪市南区西櫓町三番地
天真堂商会 大阪市高津局区内鶴橋町
東京方面の広告は参考書などが多いようだ。目がとまったのは活字販売と早刷インキ。
《此のインキで製したる一枚の原版を以て、立處ろに数百枚を印刷し得、尚此のインキ一壜にて原版一千余枚を作る事が出来る、殊に青年諸君が学芸雑誌発行などには最も適当なるものである》
うそみたい。ほしい。