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田村治芳さんの訃報

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2002年8月、京都祇園の喫茶店にて。実用書特集(『sumus』11)に原稿書いてもらうように依頼した。その後、もらった原稿がこれである。この田村さんの原稿の書き方がなんとなく好きで、封筒ごと大事に今もとっている。

田村治芳さんの訃報_b0081843_1532408.jpg


田村さんは詩人だった。それもかなり早熟な。『ストイケイオン』という田村さんたちがやっていた同人雑誌をときおり頂戴していたのだが、それにはたしか高校時代からの思い出がつづられていたような気がする(その雑誌はどこへやったか……)。そのころから雑誌を出すことに夢中になっていたようである。

こちらは二〇〇八年六月三日の消印で届いた詩集『非ナル扉』(世紀社、一九七二年五月、初刷50部、装幀=マルセル物産)。田村さん二十二歳のときの処女(?)詩集。タテ250mm×ヨコ139mmという判型、そしてレイアウトも凝っている。奥付は書肆ユリイカふうだ。

田村治芳さんの訃報_b0081843_15112070.jpg

田村治芳さんの訃報_b0081843_16341221.jpg

 3 ただれたレモンの切り口が
   火のように待つ
   何人もの死者が抱えすぎた
   謎の重みに
   ゆれながら灰化する
   それにもまして
   風景は耳にかわりながら
   すべて閉ざされた鉄格子の
   はるかな絡印の水の記憶を
   鳥以前の鳥の翼のように
   うまれるものを予兆する

この詩集と同じ封筒には『ユリイカ』一九七一年七月号(青土社)も入っていた。「どうして?」と思ったら、古葉書がはさんである「解放区」という投稿欄に飯島耕一選として田村さんの「窓」が掲載されているのだった。基本はシュルレアリスムと考えていいのかどうか、フォルマリズムというか詩の形にこだわりながら、そこから少しずつ逸脱するような作風である。同じ頁に本庄ひろし(十八歳)の名前も見える。

こちらも同時にもらったのかどうか、はっきり覚えていないが、『ストイケイオン』17号(二〇〇四年四月)付録であるという断り書きの紙片(二〇〇四年三月五日付)がはさんであった。付録といいながら『少女原写真』は火詩之夜会から一九七七年一月一〇日に刊行されたもの。ざっと読んで友の死と書いてしまったが、浅はかな。愛について、あるいは自らを客観した詩であった(と思ったのも勘違いであった!)。

田村治芳さんの訃報_b0081843_1511527.jpg

田村治芳さんの訃報_b0081843_1512567.jpg

エピローグにこんな文章がある。後年の軽妙な語り口ではないが、巧みな表現を使い慣らしている。

《それは夢のはじまりのように不確かな闇からしずかにたちのぼりはじめたのかもしれぬ夢がその本質的な極部で中断されるように わたしの全てもまた たちどころに不確かな闇にかえされる 彼が死んだと言うのであるから 彼は死んだのであろう 果たされた 「一期一会」がそこにあり 「一会」の名付けようのない痛みがわたしののどのように そこにある》

《わたしと彼とは常に 出会いの直前に対座したままに違いない 彼がわたしになることも わたしが彼になることも拒みながら ある かたくなさがそのままで むすびつけあう 一種のてことなるかのような 生死をこえた 「会う」事の原質へ わたしは近づきはじめているのかもしれない》

たまたま、田村さんの手紙の束を開けてみると、こんなことが書かれた原稿用紙が出てきた。詩集に同封されていた手紙である。

《Hayashi Tetuo
 Tamura Haruyoshi
 H.T に、T.H より

個展「窓」のために、小生が三十七年前に、発表した詩篇がありますので、送らせていただきます。まことにお恥ずかしいものですが、恥ずかしいという気持ちが三十七年もたつと、風化してしまって、おお生意気な詩を書いておるガキが、おったんだなあと他人事になります。で、「窓」のつぎは大兄の個展題は「扉」になると思われますので、その為につくられた一冊も進呈、「窓」の中に“心”があり「扉」の中に“非”があるという、まあ、つまんねえ冗談のようなもの“非ナル扉”カバー付は極珍、戦前に出ていれば石神井さんの目録向きだったんだが、七痴庵》

なるほど、これで「窓」と「扉」の謎が解けた。二〇〇八年の「窓」展の案内状の返礼だったわけである。《カバー付は極珍》! それで表紙にタイトルが記されていないのか。このカバー付きは手に入らないだろうなあ……。

田村さん、さよならです。
http://sumus.exblog.jp/7643945/
by sumus_co | 2011-01-02 11:36 | 写真日乗
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