
讃州堂書店の鉄道線路をはさんで真向かいにある建物。なかなか絵になるなあと思ってパチリ。今回は読むための文庫本を探す(病院の時間待ちだとか)つもりが、こんな本を買ってしまった。『字学夷考』。題箋も刊記もない。内容は易にいわくから始まって、中国の字(書)の歴史をのべてわが国にいたる。ひとえにこの印刷技法に魅かれて。文字の白い部分は紙の表面を剥ぎ取ったように凹んでいる。同一かどうか『字学夷考』で検索すると小田切圖南の法帖(文政四年上梓)がヒットした。

リバー書房は高松市の目抜き通りに面している。こちらにもいろいろ欲しい本はあったのだが、軍資金の関係もあってながめるだけで終った。一冊だけ、大木惇夫『海原にありて歌へる』(アルス、一九四三年四月一〇日)の裸本を迷ったすえに購入。迷ったのは裸本だからだが、しかし裏の見返しに貼ってあった書店のレッテル「教育図書/書肆・回天堂/京都・河原町・四条北/電話本局(2)五三二二番」の魅力に負けた。また奥付を見ると印刷者に松岡虎王麿の名前が出ている(三鐘印刷株式会社=東京市神田区錦町三ノ一一)。このブログにおける松岡虎王麿についての記事は下記。
ボードレール『巴里の憂鬱』
http://sumus.exblog.jp/8517928渋川玄耳『支那閨房秘史』
http://sumus.exblog.jp/10368154

『海原にありて歌へる』は昭和十七年にジャワのジャカルタにあるアジヤ・ラヤ新聞社のアジヤ・ラヤ出版部から発行された(これは稀覯本。昔、ある目録に出ていたのを見たことがある)。「国内版あとがき」で出版の経緯に触れたところに活字の話が出ているので引いておく。
《日本語のわからぬ現[ママ]住民を使つて、さらでも不足してゐる日本活字の中から出来るだけ綺麗な活字を選び出し、大小、幾通りかの活字を写真によつて或は縮小し或は拡大して一体に統一し、その一字一字を台紙の一齣一齣に貼つけ、ルビも同様の工程の後に丹念に貼つけ、何回かの校正を了したものを更に写真製版して出来上つたのである。》
これだとオフセット印刷だったということになろうか。