
古本きんどう市で見つけたこの一冊(!)。moderna さんの出品。『白雲堂古書目録』第五輯(白雲堂書店、一九三五年一二月五日)。神戸市葺合区坂口通五丁目一番地にあった古書店。季村敏夫『窓の微風』(みずのわ出版、二〇一〇年)にはこうある。
《藤木渉(本名、岡本甚一。小説では丘本冬哉、冬木渉)は関西学院のあった原田の森の近くの水道筋で博行堂書店という古本屋を営み、ガリ切りなどの裏方作業をいっしんに引き受け、どんなときも変らず、足立巻一を支えた硬骨漢である。博行堂書店の周辺には『戦旗』を置いていた白雲堂、エスペロ、宇仁菅、怺心荘など古書店が多く、関東大震災の後に、帝都から移動してきた村山知義や岡本唐貴らのサインが入った古本がまだたくさん残っていたという。白雲堂に『戦旗』があったのは、店主の古屋[ママ]実三の思想によるところ大であるが、店の近くには、同人誌『布引詩歌』を主宰する笠原勉らが出入りした黒闘社や、久板栄二郎により結成された全日本無産者芸術連盟(略称ナップ)の神戸支局があったことも見逃せない。》p195
古屋実三は古家実三が正しい。『窓の微風』の校正を手伝った者としては申し訳なく思う。『白雲堂古書目録』表紙の裏(表2)に標語のようなものが掲げられている。
子曰く 其人を知らむと欲せば、先づ其書斎を見よ。[下略]
こんなこと孔子が言ってたっけ? 目録の内容は自筆ものから、古写本、詩文集、美術書、その他一般。本格的な古書籍商である。すでに昭和十年なので店主の思想云々は感じられないようだ。このところ話題にしている漢詩集・文集のコーナーで、高額なものは『東湖遺稿』5,00、『南冥詩集』5,00、『玉山詩集』4,00、『五山堂詩話』3,50、『春草堂詩抄』3,20、『渓琴山房詩』3,00……あたり。追加の部に『山陽印譜』(頼復、明治五年、一冊、小本)が出ており、十円ついている。ちなみに現在の「日本の古本屋」で探すと『東湖遺稿』六冊は25,000円ほど(五千倍)。天保版『渓琴山房詩』二冊は45,000円で一万五千倍。
古本きんどう市を後にして北上、ルーシー・リー展を見た後は老松町へ。裁判所の近くの古書店・伏見屋書林さんをのぞく。久し振り。人文系のいい本がそろっている。美術系も充実。詩集も多くはないが筋がいい。値段もおだやか。
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君本昌久『詩集 ぼくの第九』(蜘蛛出版社、一九九二年五月一日)を見つけた。季村敏夫さんのルートをたどっているような出会いだな。