上は田能村竹田(たのむら・ちくでん)の『山中人饒舌』上巻(文栄堂、一八七九年四月二五日飜刻御届、タテ133mm)、下は伴源平(ばん・げんぺい)『新撰書画一覧』上巻(赤志忠七、一八八八年一〇月三日出板、73×154mm)。どちらも上下二巻本で下がない。もちろん百円均一。こういう小さい本が好きで見つけ次第買っている(もちろん内容は吟味するよ)。
明治期に刊行された『山中人饒舌』はこの文栄堂こと前川善兵衛版とほぼ同時期に、同じ判型の倉沢柾七版、そして少し縦長(180mm)の米原覚之助版と田能村順之助版が流布しているようだ。いずれも大阪の版元。奥付に嘉永七年原版(藤屋禹三郎)とあるものの、前二者の版面は酷似しているが、後二者は少し違っている(近代デジタルライブラリーで比較できる)。
元版は竹田の歿年である天保六年に刊行された。画論であり画人伝である。有名画家を取り上げているだけでなく、小生などまったく聞いた事もないような画家(あるいは画を描く人、絵師とは限らない)の名前がずらずら出てくる。それが案外おもしろい。活字本もいろいろ出ているけれども、岩波文庫をはじめどの文庫シリーズにも入っていないようだ。惜しい気がする。
一方の『新撰書画一覧』は美術家人名事典のようなもの。例えば、田能村竹田の項は下記のごとし。
《名孝憲字ハ君彜通称行蔵竹田ト号ス豊後岡ノ人本藩ノ世臣江戸ニ行テ古昔陽岳東海ニ学ヒ後チ京師ニ遊村瀬栲亭ノ門ニ入リ詩文ニ長シ書画善クス又聞香喫茶ニ及フ天保六年浪花ニ没ス》
伴源平には森琴石(画)との共著『大阪名所独案内』(吉岡平助、一八八二年)、『頼山陽外史小伝』(赤志忠七、一八七八年)など編著がある。明治前半に活躍した大阪の著述家である。