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マビヨン通りの店

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山田稔『マビヨン通りの店』(編集工房ノア、二〇一〇年一〇月一七日、装幀=森本良成、カバー絵=野見山曉治)。『VIKING』『CABIN』『海鳴り』に発表されたものは読んでいるが、再読するとまた違った感想がわく。

表題作は、一九七七〜七九年にパリに滞在したとき、マビヨン通り十番地にあったレストランに山田が毎週木曜日、ポトフを目当てに通っていたことと、そのレストラン・シャルパンティエの先代の主人が椎名其二に便宜をはかって、椎名が地下の物置に住んでいたことを、野見山曉治『四百字のデッサン』(河出書房新社、一九七八年)や蜷川譲『パリに死す 評伝・椎名其二』(藤原書店、一九九六年)を読んで知ったという話。そして一九九九年に再訪したときにもういちどマビヨン通りのレストランへ行こうとするのだが……。

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マビヨン通りはこの白線で囲んだあたり。メトロのマビヨン駅とサンシュルビス教会をつなぐ小路。二〇〇八年にドラゴン通りに宿っていたときにはよくこの駅を利用した。左側の小さな白丸がそのときのステュディオの位置。小生も昔読んだ『四百字のデッサン』ではやはり「マビヨン通り 椎名其二」の一篇が強く印象に残っているが、二〇〇八年には、椎名が製本仕事をしてつましく暮らしていたという十番地の穴倉を訪ねてみようというアイデアは浮かびもしなかった。また機会があれば訪れてみたい。

蜷川譲さんとは、どうしてだか今すぐにきっかけが思い出せないけれど、二度ほどお会いしたことがある。一度は京都に来られて食事をごいっしょした。その折りに『パリに死す 評伝・椎名其二』を執筆された理由のひとつが、野見山氏のエッセイの椎名像があまりに強烈で一面的なのを正したかったというような意味のことをうかがったと記憶する。金山康喜についても同様のことをおっしゃっておられた。

もうひとつ、山田さんが「ニーノさんのこと」を書いておられて、ちょっとビックリした。これは『文学界』が初出なので読んでいなかった。小生も山崎書店の山崎さんに紹介されて、一九九八年、ボローニャに戻ってボローニャ大学で江戸美術の講義をしながら私設の東洋美術研究所を運営しておられたニーノさんを訪ねたのだ。ひょうひょうとした紳士であった。その滞在のことは拙著『古本デッサン帳』(青弓社、二〇〇一年)の「ボローニャ時間」に書いてある。ちょっと読み返してみて、《母上はフィンランド出身とか》としたのはスウェーデンの間違いだと気づいた。山田さんは京大で学生にまじってイタリア語をニーノさんに習ったのだそうだが、山田さんの記述を見てスウェーデンだと思い出した。

未発表の「転々多田道太郎」もいい。とくに最後に多田に呼ばれて見舞ったときの描写は抜群である。人を見たまま感じたままに描くことは案外と難しいものだが、やすやすとやってのけるところが山田稔の真骨頂だろう。

山田さんがオランピア劇場で聞いたというナナ・ムスクーリの「Le temps des cerises」はこちら。
http://www.youtube.com/watch?v=ayYKtriID80
by sumus_co | 2010-10-17 22:36 | おすすめ本棚
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