水原紫苑の歌集『あかるたへ』(河出書房新社、二〇〇四年一一月三〇日、装幀者=間村俊一)。ブックオフの105円コーナーにあった。パラパラ見ると、鉛筆で丸印がいくつか。その歌を抜いてみる。
しじふから、すずめ、ちひさき鳥たちのいづれも空のかぎりをもてりや
立ち枯るる紫陽花の群れ売色の果てならなくに色を呪へる
エゾリンダウ足下に流れゆるゆるとリフトは死者を生者に変へつ
爆心地たちまち抜けて宮島へ向はんとするわれは何者
西行に見せまほしきは牙持てる北のさくらぞ荒き息せむ
色淡き北の朝日子ゆらゆらに昇り来たりて鳥まつはらす
他に三角印もあるが略す。「あかるたへ」は祝詞で使われる言葉。清くうるわしい(織物)の意味。たとえば「みたまを齋戸に鎭むる祭」には
《宇豆(うづ)の幣帛(みてぐら)は明妙(あかるたへ)・照妙(てるたへ)・和妙(にぎたへ)・荒妙(あらたへ)・五色物(いつつのいろのもの)》
と出ているが、だいたいこのセットで幣帛(神に奉納するもの。御幣)の内容を示すために用いられるようである。宇豆は「尊いこと、珍しいこと」、照妙は「光沢のある織物」、和妙は「やわらかな織物」、荒妙は「粗末な布」。
それにしてもこの装幀、間村流の冴えた手並みに唸るばかり。