
一八九〇年代のアメリカのサインボード。ニューハンプシャーの禁酒会の建物に着けられていたそうだ。赤目、傷、冗舌、口論、悲しみ。
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J・エプスタイン『出版、わが天職』(堀江洪訳、新曜社、二〇〇一年一二月一〇日)を読了。するとタイミングよくアメリカ合衆国で最大の書店チェーン、バーンズ・アンド・ノーブルが身売りかのニュース。身売りとというわけではなかったようだが、絶好調でもないようだ。
『出版、わが天職』はちょっとまとまりのない内容だが、断片的には面白い。エプスタインはダブルディに入社後ランダムハウスへと移り、一九六〇年にペーパー・バックスの「アンカー・ブックス」を創始して名を成した。六三年に書評誌『ニューヨーク・レビュー・オブ・ブックス』を創刊。八〇年代にはアメリカの古典文学を定本化した「ライブラリィ・オブ・アメリカ」、八九年には『リーダーズ・カタログ』(新刊書の通販カタログ、四万タイトル二千頁)を発行して書籍のネット通販に先鞭をつけた、というような人物。
彼が電子書籍についてこのように発言している。
《新技術は本の流通を根本から変えるだろうが、編集とパブリシティという、出版に不可欠の仕事を外すことはないだろう。原稿はいっときに一歩ずつ、手仕事をとおして本へと姿を変えてゆくのである》《タイプライターやインク壷に代わるコンピュータの問題含みの有利性は別として、新技術はこの過程を簡単にしたり向上させたりするものではない》
また書店についてはこうも書いている。
《これからの書店は、ネット書店がなろうとしてなれないものになることが必要なのだ。手に触れることが出来、親密で、地域に根ざすもの、関心をともにする人々の輪に喜びと知識をもたらしてくれるコーヒー・バーなどがある、地域の聖なる場、必要な本はいつでも見つかり、どの棚からも驚きと誘惑が湧いてくる殿堂となることが》
こんな本屋が近くに欲しい。