空想書店書肆紅屋『書肆紅屋の本』(論創社、二〇一〇年七月三〇日、装幀=宗利淳一)。いわずと知れた紅屋さんのブログの単行本化である。
《年数回の京都遠征や、トークショーを聴きにいったこと、あるいは一箱古本市などに参加したことなどを中心とした行動編ともいうべきところをセレクションしてお届けいたします。二〇〇七年八月一〇日から二〇〇九年十二月二三日の分です》
紅屋さんのブログで何が便利(?)といってトークショーの梗概を記録してくれているときほど有り難いことはない。文中に小生も東京古書会館やシマウマ書房のトークなど何度か登場しているが、紅屋さんが会場に来てくれれば安心してしゃべれるようなところがあった。内容はもちろん会場の雰囲気とかツボを得た感想だとか紅屋さんに任せておけばちゃんと書き残してくれるのだ。
または、聞きたくても聞きに行けないトークなどもきっちりと大筋が分かるように書いてくれるのも嬉しいし、語り部というのともちょっと違うようだが、こういう客観描写を含んだブログのスタイルは案外とユニークではないだろうか。トークや展覧会などを聞いたり見たりしてブログに書いている人は数知れないが、自分勝手な感想だけ書いておしまいというのがほとんどのように思う。
コラム1〜4も読みどころ。ご自身の本との関わりを書いておられる。書店バイトから、取次入社、出版社営業、そして編集から雑誌のモバイルサイト企画運営へ。書籍流通のそれぞれの局面を身を以て体験されているというのはこれ以上ない貴重な財産ではないだろうか。
新刊、古書問わず、購入本が一目で分かるように記録されている。その触手の伸びる具合というのも、いったいこの人は何なんだ? と思わせられるくらい、渋く軽く、その懐の広さを感じさせられる。今後ともますますのご活躍をお祈りします!