ヴァレンシア美術館の絵葉書より。「Autorretrato de Diego Velázquez」十七世紀。スペイン東南部のヴァレンシアは蜜柑の産地として名前だけは知っていたが、じっさい列車で通ってみるとほんとうに柑橘類を一面に栽培している農園が目立った。一九八〇年が明けたばかりのころに訪れて一泊した。のんびりした地方都市という感じだった。
何も期待せず町の美術館をのぞくと、当地の画家などにまじってこの小さなベラスケスがあった。たぶん三号ぐらいのサイズではなかったか? 大学ノートくらい。これにはビックリしてしまった。ヴァレンシアを出た後、いろいろ曲折あってマドリッドのプラド美術館へ、あの有名な「ラスメニナス」を含むベラスケスの部屋へたどりつくのだが、そこで見たどの作品よりもこの小さな自画像が好きだった。