『水牛通信』第七巻第十号通巻75号(水牛編集所、一九八五年一〇月一〇日)がひょっこり出てきたので取り上げてみる。買った覚えはないので、たぶん神戸に住んでいたころに風来舎の伊原さんあたりにもらったのではないかと思う。三十二頁中綴じの小冊子だが、中味は濃い。
《「水牛通信」の前身は「水牛新聞」で1978年10月に第1号が発行された。1980年1月からは月刊発行になり「水牛通信」となる。32ページで値段は200円。1987年11月号で通算100号になり、これで終刊となった。後に、1割弱の記事をまとめて「水牛通信1978-1987」(リブロポート,1987年,ISBN 4-8457-0310-6)という本として発行された。》(ウィキ「高橋悠治」)
この号の巻頭「工房訪問」はミニFM局(自由ラジオ)の一つが電波法違反で摘発されたという事件について。粉川哲夫、津野海太郎らが東京のミニFM各局、ラジオ・コメディア杉並、FM高円寺、ラジオ・ホームラン、ラジオ・マーマレード、ラジオ・コメディア豊島、小室等(出演者の一人として)、そして逮捕されたKYFM局の責任者たちから意見を聴いている。津野氏は《自由ラジオの運動には中心ができない、それがおもしろいところじゃないか》と分析しつつ《これから先どういうふうに動いていくにせよ、なんらかの新しい動き方をつくりださなくちゃいけないようなものを、そういうものをみんながはじめてしまったんだということですね》と結論付けている。
連載は玖保キリコ、田川律、鎌田慧、高橋悠治、編集後記は八巻美恵(高橋夫人)。この冊子は版下ワープロ出力のダイレクト印刷だと思うが、「水牛かたより情報」に次のような案内が出ていた。
《「ワープロは現代のガリ版か? ミニコミとワープロ、あるいは表現者とコンピュータ」10月27日(日)2時〜7時。すぺーす・しょう中野。[略]安くなりミニコミ界にも進出著しいワープロ。私たちの"武器"がふえたと喜ぶか、コンピュータ社会の末端と警戒するか、まずはざっくばらんな話の場を!》
小生もこの頃からワープロはたしか四台ほど買い換えて使ってきた。いくつかフリーペーパーを出したし、『ARE』は全冊、『sumus』も五号まではワープロ版下。感慨深いものがある。それにしても文中に見える《"武器"》という表現がまだまだそんな時代だったのかなと思わせられるし、2時〜7時にも驚かされる。今なら、"武器"はツイッターかな(?)。DTPのフリーペーパーはほぼカンペキに純粋な自己表現の場となっているようだ。
水牛
http://www.suigyu.com/
「水牛通信」100号の全目次