必要あって『太陽』四〇九号(平凡社、一九九五年六月一二日)の植草甚一特集を見ていると「とっておきの漫画を見せてあげよう」という記事が目にとまった。植草が《終生手元においたお気に入りの漫画家たちの本》が紹介されている。そのなかにトポールの『Toxicologie』(Diogenes Verlag, 1970)が図版入りで挙っていた。タイトルは「毒物学」とでも訳すのか。
これを見て、そういえば植草には『ぼくがすきな外国の変った漫画家たち』(青土社、一九七一年、装本=長尾信)という著書があったはずだと思い出した。日本の古本屋で検索すると、かなりの数が出品されている。いちばん安い方から、後払いのところを選んで注文した。当然ここにもトポールが載っていると期待したのだ。この本は二十年ほど前に図書館で参照した記憶があったのだが、トポールの有無までは覚えていなかった。

届いた本を開いてびっくり。直筆サインが入っていた。このイラストサイン付きの本がずっと欲しかったんだな、ラッキー(!)。献呈した相手はおそらく漫画家の境田昭造(1928-1991)であろう。
ところがトポールの方はハズレ。いや、完全なハズレではなく、『Scanlans』(June 1970)の表紙が図版として掲載されていた。これはトポールの表紙画なれど(サインが読み取れる)トポールについての言及はなし。他にも
《フランスで人気のあるパロディ雑誌「ハラキリ」Harakiri の新しいところも観光客が棄てていったのを古本屋で見つけたが、ビックリするほど面白いので一年ぶん予約した》
などと書いてある。『Harakiri』についてはいずれ少し触れたいが、なるほど、植草甚一はロミの兄弟だったようだ。植草もまたアンソリット大好きの趣味の人であり、目利き(コネスール connaisseur)なのである。雑学でとどめておく、これが重要だ。それだからこそ古本遊びを、そして人生をサイコーに楽しめたにちがいない。