
『彷書月刊』5月号が届いた。松尾邦之助特集とはシブい。しかし松尾邦之助は面白い。ジャーナリスト流の文章はやや物足りないところもあるものの、激動の実際面を広く見聞したというところに強みがある。パラパラやっていてこの写真が目にとまった。『フランス・ジャポン』四巻二〇号(日仏同志会、一九三六年五・六月号)掲載で高浜虚子夫妻がパリを訪れたときの記念写真。
前列左から二番目が高浜虚子。後列右から二人目が松尾邦之助。その松尾の隣、向って右端が池内友次郎(いけのうちともじろう)。虚子の次男として東京に生まれ、慶應義塾大学予科中退の後、一九二七年にフランスに渡りパリ音楽院に入学した。作曲家・音楽教育家であり俳人でもある。

どうして池内友次郎にひっかかったかというと、先日も紹介した同人雑誌数冊のなかに池内を戴いて発行されていたガリ版刷りの俳句雑誌『白土』第二巻第七号(白土社=佐賀県西松浦郡有田町、編輯兼発行人は玉秋梶原隆一、一九四七年八月一五日)がまぎれていたからだ。池内のことをちょこっと調べた。すると直後に『彷書月刊』が届いたというわけである。
『白土』には星野立子の「近詠」も掲載されている。
法師蝉子無き妻無きときはなし 友次郎
涼風にふりむき人眉をあげ 友次郎
病葉の一面に散り菩提樹下 立子
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もう一冊ガリ版の『明治大正歌書研究』第一冊(一九二六年一〇月五日)もあった。雑賀重良(さいかしげよし)の個人雑誌。和歌書のコレクターとして知られたらしく、雑賀重良旧蔵書として
名古屋市蓬左文庫に近代短歌を中心に江戸から近現代までの和歌書約18,200点が所蔵されている。
後記に明治大正歌書解題編纂の補助のために発行するとし、いずれ活版でまとめたいと書かれているが、『明治短歌研究』(一九二八〜九年)という著書がその一部になるのだろう。他に『明治大正尾参歌書目録』(日光堂、一九三七年)、『尾三歌書年表』(日本歌書年表編輯所、一九七三年)の編著がある。
売本、求本のリストも載っている。主な記事は現物調査に基づいた見地から他の研究者の論文などの表現に訂正を迫る短文。たとえば白秋の
『桐の花』の三版から「ふさぎの虫」一篇が《削除されて居る事に気付いて居られる方は未だほとんど無いらしい》というような指摘である。
ところが、じつは小生もこの
『桐の花』の三版を持っている。確認したところ「ふさぎの虫」はちゃんと収録されているし、挿絵も初版同様に貼り込み。どうしてだろうか。雑賀氏所蔵本にはそれがなかったことは間違いないようだが……。古本は一冊だけ見て云々してはいけないと、あらためて自戒。
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大正十五年と昭和二十二年のリトルプレスに触れたところで、今日配信された
「日本の古本屋メールマガジン」(平成22年4月)に載っている畠中理恵子さんの文章を紹介しておく。《この三月から東京堂書店ふくろう店に担当の棚「地方小出版(物)、リトルプレス」ごと引っ越しまた路面で働き始めた》ことについて書いておられる。