
美術館の帰り道、水明洞の前を通ったら、びわこのなまず先生が均一箱の前でしゃがみこんでおられた。あちゃー、と思いつつ、御あいさつ。先生は店内へ。こちらも均一箱に一通り目を通すと、まずこの『ライフ』一九七二年十二月二十九日号があった。週刊としては最終号(一九七八年に月刊として復活)。巻頭に「ライフ最終号、読者のみなさんへ」というメッセージが載っている。

写真で見る一九七二年。まずはやはりベトナム戦争から。キッシンジャーの終戦へ向けての秘密会談、南北ベトナムの惨状。ついでアポロ計画終了。ニクソンと周恩来、ニクソンとブレジネフ。北アイルランド闘争の泥沼化。ライザ・ミネリとリズ・テーラー。ミュンヘンの惨劇。肌を露出した女性のファッション。上院議員マクガヴァン。そしてソルジェニーツィンの小説『August 1914』がソヴィエト国外で出版されたことと、モスクワの自宅へ西側の新聞記者たちを招いたこと。

そしてオリンピック、アミン大統領、映画「ゴッドファーザー」が世界中でヒット、七つのメダルを首から吊るすマーク・スピッツ、チェス世界チャンピオンのボビー・フィッシャー、ハリケーン・アグネス、ハワード・ヒューズ、エネルギー危機、スカイジャック、チャンピオン競争馬リヴァ・リッジ、その他いろいろ。誰が火を付けたわけでもないのに世界は燃えていたんだなあ。むろん今も燃えている。
もう一冊、三島文庫の網野菊『海辺』(三島書房、一九四七年)を和本の下から引き出し、二冊を手にしてこちらも店内へ。百円棚の前でなまず先生と立ち話。ふと見ると先生も三島文庫の上林暁『紅い花』を握っておられるではないか。
「あ、それがありましたか」
「おや、それもありましたか」
顔を見合わせて苦笑する。