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TLS

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N氏より、こんな記事見つけましたよと『THE TIMES LITERARY SUPPLEMENT』No5581(March 19, 2010)の複写を頂戴した。パリでシェイクスピア・アンド・カンパニイ書店を営んでいたアメリカ人女性シルヴィア・ビーチ(1887-1962)の初めての書簡集『THE LETTERS OF SYLVIA BEACH』(Columbia University Press, 2010)が今月刊行された。そのレヴューである。シルヴィアはジェームズ・ジョイスの『ユリシーズ』(一九二二)を初めて出版したことで知られている。

一九一七年頃からアドリアン・モニエの「本の友の家 La Maison des Amis des livres」に入り浸り、一時はモニエの書店のニューヨーク支店を開こうとまでした親友だった。一九一九年にデュプイトラン通(rue Dupuytren)八番地にシェイクスピア・アンド・カンパニイ書店・貸本店を開店し、一九二〇年にトリエステからエズラ・パウンドのすすめでパリへ移転してきたジョイスと出会って意気投合、『ユリシーズ』を出版することになったのである。もちろん『ユリシーズ』が日の目を見るまでに一苦労あり、日の目を見てからも更に幾重もの困難が待ち受けていたのだけれど。

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『シェイクスピア・アンド・カンパニイ書店』(中山末喜訳、河出書房新社、一九八二年再版)によれば一九二一年にシェイクスピア・アンド・カンパニイ書店はモニエの店の向いオデオン通十二番地に引っ越した。

《いわゆるサルトル=ボーヴォワール時代の前には、サン・ジェルマン・デ・プレにあったカフェには物静かな文学者たちが出入りしておりました。もっとも、エズラ・パウンドはドゥー・マゴ、レオン=ポール・ファルグは通りを隔てたリップスといった、それぞれのカフェでよく見かけられました。いつも何かが起っている私たちの二つの書店を除くと、サン・ジェルマン大通りから少し引っ込んだ私たちのオデオン通りは、田舎町の小さな通りのように落ち着いていました。》

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これがオデオン通十番地の古書店。この隣、向って左が十二番地になる。この写真を撮ったときにはビーチの店の場所は知らなかったが偶然スナップしていた。

ビーチの手紙は回想記と併せて読むといっそう興が湧くようだ。TLSの評者James Campbellも両書を引用しながらビーチの活動を紹介している。なかでいちばん興味を惹かれたのは、下世話なようだが、モニエとシルヴィアが恋人同士だったのではないか、というくだり。編者のウォルシュが解説のなかで二人に共通の文学や書物への情熱が生涯にわたるラヴ・アフェアーとなったと書いている。キャンベルは証拠がないと否定的であるが、ジョイスの妻の伝記『Nora』の著者Brenda Maddoxは《誰もが彼女たちは恋人同士だと確信していた》と書いているそうだ。

シルヴィアはガートルード・スタインとアリス・B・トクラスの二人と一時親しく付き合っていたようだから、当時、そういう関係が特別に風変わりなものだったと即断してはいけないのかもしれない。同志であった、と言うべきなのかも。

シェイクスピア・アンド・カンパニイ書店は戦時中に店を閉じた。その映画のような顛末が書かれている。ナチがパリに侵攻してきたとき、完璧な英語を話すドイツ人将校がビーチの店にやってきて飾窓に展示してあった『フィネガンズ・ウェイク』を買いたいと言った。しかしビーチは売り物ではないと言って引っ込めてしまった。怒った将校は店を没収すると怒鳴り散らして帰って行った。ビーチはただちに本を箱詰めして隠してしまった。数時間後に将校らがやって来たときには没収するべき本はもう何もなかった。しかしビーチは逮捕され、六ヶ月間ヴィッテルにある収容所へ入れられた。その隣には後にアウシュビッツへ送られるユダヤ人たちがいたという。
by sumus_co | 2010-04-07 21:32 | 喫茶店の時代
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