河野仁昭『天野忠さんの歩み』(編集工房ノア、二〇一〇年、カバー絵=竹中郁)。河野氏が天野忠についてこれまで書いて来られものをまとめた一冊。大幅に加筆した文章もあるとのこと。天野忠の詩集や関係した雑誌の表紙図版が多数収められ、著作目録(単行本のみ)、「コルボウ」の総目次も付される。
圭文社時代の天野の様子、彼が編集した『リアル』という雑誌についてなど、そして昭和二十四年にリアル書店という古本屋を上京区北大路新町電停前に開業するくだりなど、じつに興味深く読んだ。天野が古本屋だったのは二十六年五月、奈良女子大学付属図書館に勤めはじめるまでのおよそ二年間だったようだ。リアル書店には田中克己、矢野峰人、山前実治、城小碓らが立ち寄り、あらたな交流の輪ができて行ったという。
「天野さんの机」の写真もいい。